相場展望1月20日号 米ナスダック総合指数は『調整局面入り』 米金利は、上昇続き10年物は一時1.9% 日銀はインフレ対策の手を速めるべき時期

2022年1月20日 11:20

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■I.米国株式市場

●1.NYダウの推移

 1)1/17、「キング牧師誕生日」の祝日ため休場

【前回は】相場展望1月17日号 岸田首相ばら撒き資金⇒小林虎三郎流教育投資⇒日本の高度成長再び⇒借金1,000兆円返済 米国FRB「雇用⇒インフレ抑制」に舵を切った

 2)1/18、NYダウ▲543ドル安、15,772ドル(日経新聞より抜粋
  ・米長期金利が一時1.87%と前週末比0.09%上昇し、2020年10月以来の高水準を付け、相対的な割高感が意識される高PERのハイテク株が意識され売られた。
  ・決算発表が嫌気されたGサックスが大幅に下げ、金融株全般に売られたのも重荷。
  ・米原油先物相場が1/18、一時7年ぶりの高値を付けたこともあり、インフレ警戒が強まった。
  ・FRBが金融引き締めを前倒しする可能性が高まり、投資家心理が悪化した。
  ・ハイテクが軒並み売られ、マイクロソフト・セールスフォースが大幅に下げた。

 3)1/19、NYダウ▲339ドル安、35,028ドル(日経新聞より抜粋
  ・NUダウは市場予想を上回る好決算銘柄が買われ上昇したが、買い一巡後は10年物金利上昇もあり景気敏感株が売られ下げに転じ、この日のほぼ最安値で終えた。
  ・米12月小売売上高が前月比で減少したのを受け、米景気強気の見方が後退気味。
  ・WTI原油先物が7年ぶり高値を付けるなど、インフレ加速の対応として米連邦準備制度理事会(FRB)が金融引き締めを急げば減速感が強まるとの懸念が出てきた。
  ・米10年物長期金利は1.8%台半ばで高止まりし、ハイテク株の売りを誘った。
  ・一方、好決算発表した日用品のP&Gや医療保険のユナイテッドヘルスは買われた。

●2.米国株は後退局面、1月高値からナスダック総合は▲9.4%安、NYダウ▲4.8%安

 1)米国株と日本株下落の状況(1/3~4高値と1/19比較)
   NYダウ     36,799ドル ⇒ 35,028 ▲1,776ドル安・▲ 4.8%下落
   ナスダック総合 15,832    ⇒ 14,340 ▲1,492安  ・▲ 9.4%下落
   半導体株指数   4,027    ⇒  3,612 ▲ 415安  ・▲10.3%下落
   日経平均    29,332円  ⇒ 27,467円▲1,865円安 ・▲ 6.4%下落
  ・米国株のNYダウは最近買われてきた景気敏感株が景気後退懸念で売られた。金利上昇を嫌うハイテク株が多いナスダック総合は、『調整局面入りとされる▲10%』近辺の▲9.4%下落、特に主力の半導体株指数は▲10.3%下落となり『調整局面』に入ったと判断できよう。

 2)金利高となり、10年物利回りは1/19に一時1.9%まで上昇
  ・金利上昇の要因
   物価上昇(インフレ加速):消費の強さによる需要増
   原油価格の高騰
   供給網混乱による輸送費の上昇
  ・金利の上昇推移     1/3   ⇒ 1/19
     2年物国債利回り   0.768% ⇒ 1.051% +36.8%高 
     10年物国債利回り  1.628% ⇒ 1.854% +13.9%高
  ・金利が上昇すると、株式市場に「ニュー・マネー」が入りにくくなる。それを先回りした、「株式市場から脱出」「売り仕掛け」が多くなりやすい。

 3)金利上昇のベースにFRBのスタンス変更有り
  ・米連邦準備制度理事会(FRB)は『雇用⇒インフレ』対策に急転換
  ・パウエルFRB議長は議会証言で、「高いレベルでの物価上昇が定着すれば、さらに強く金融引き締めをする政策を取らざるを得ない」と述べた。
  ・FRBの影響を受けやすい2年物国債利回りは1/19、1.051%と急騰し、ほぼ2年ぶりに1%を上回った。
  ・金融引き締め策は『インフレ対策強化で加速化』の可能性強まる
  ・金利の上昇
    金利引き上げ幅 1回当たり25bp⇒例えば50bpの大幅引上げも予想に
    引上げ回数   年2回⇒年4回と回数増も予想に
  ・過剰マネー吸い上げ(FRB保有資産の縮小)もテーブル上に

 4)VIX恐怖指数は20を超え高値圏入りし、警告
    1/3、4  1/19
   ・米国株  16.6 ⇒ 23.85  +43.7%上昇
    日本株  18.63 ⇒ 22.79  +22.3%上昇

 5)チャート面からの見方では、弱気に
  1)米国株:SP500は長らく下値支持線とされてきた100日移動平均線を下に抜け、チャート上の底値が見えにくくなった。そのため慎重な向きの売りを誘いやすくなっており注意信号が点灯。
  2)日本株:最近の株式市場は米株に先駆けて売られる局面が増えている。1/19の大幅下落で、押し目買いが入りやすい環境となるが、米株連動の相関性が高いため、米国株の動向を見定めることが重要になる。

●3.トンガ沖噴火で、「世界的に寒冷化し、食糧危機」に(ZAKZAKより抜粋

 1)大気中の粉塵で太陽光を遮断し、農業や畜産業に打撃、脱炭素社会の実現も困難か。

 2)フィリピン島にあるピナツボ火山の噴煙が成層圏まで達し、光を遮断したため、1993年ごろまで冷夏に襲われたことがある。

 3)日照量が減少すると太陽光発電も心配となる。逆に、原子力発電は強みを発揮すると思われる。

●4.ナンピアック大学世論調査、バイデン支持率33%と過去最低を記録 (日テレ)

●5.米1月NY連銀製造業指数が▲0.7%と、予想+25・12月+31.9から予想外(フィスコ)

■II.中国株式市場

●1.上海総合指数の推移

 1)1/17、上海総合+20高、3,541(亜州リサーチより抜粋
  ・中国人民銀行(中央銀行)の緩和スタンスが好感する流れとなった。人民銀は中期金利を1年9カ月ぶりに引下げ、前回を上回る資金供給を実施した。
  ・新規コロナ感染が再拡大する中、経済活動の停滞が不安視された。
  ・一方、中国の2021年国内総生産(GDP)成長率は前年比+8.1%となり、市場予想+8.0%をやや上回ったものの、前年度実績+9.8%からは大幅に鈍化している。
  ・12月小売売上高が大幅に予想を下回り、鉱工業生産額は上振れるなど、まちまち。
  ・業種別では、ITハイテク・不動産が高く、非鉄関連が冴えなかった。

 2)1/18、上海総合+28高、3,569(亜州リサーチより抜粋
  ・中国政府による経済対策への期待感が相場を支えた流れとなる。
  ・今週1/20に公表される銀行貸出の指標となる最優遇貸出金利(ローンプライムレナ、LPR)について、再引下げが濃厚と、指摘されている。
  ・習近平・国家主席は1/17、世界経済フォーラムで、足元が減速している中国経済に関して、「経済成長に自信を持っている」と述べた。
  ・業種別では、エネルギー・金融・酒造など大型株が相場を牽引し、医薬品は安い。

 3)1/19、上海総合▲11安、3,558(亜州リサーチより抜粋
  ・中国の経済活動の停滞が懸念される流れとなった。
  ・中国の孫型コロナ新規感染者数は減少する中、「ゼロコロナ」政策が堅持され、行動抑制強化の不安は依然としてくすぶっている。
  ・米金利高は、新興国から資金流出すると警戒されたが、下値を叩く売りはない。
  ・最優遇貸出金利の再引下げ期待が高まっている。
  ・業種別では、ハイテクの下げが目立ち、石炭・食品飲料・金融・不動産が上昇。

●2.中国「高所得国」入りが間近、2022年にも基準達成(読売新聞より抜粋

 1)中国の経済政策を統括する国家発展改革委員会は、2021年の1人当たり国内総生産(GDP)が12,551ドルになり、「高所得国」に近づいたと発表した。
 2)世界銀行は1人当たり国内総所得(GNI)が12,695ドル以上を「高所得国」と定義しており、早ければ2022年には基準をクリアしそうだ。

●3.中国の2021年10~12月期の国内総生産(GDP)は前期比+4.0%増となり、7~9月期に比べ減速化(共同通信)

●4.中国12月小売売上高は前年比+1.7%、市場予想+3.8%を下回る(フィスコ)

●5.中国国家統計局発表、2021年の国内総生産(GDP)が実績で前年比+8.1%増(共同通信)

●6.中国鉱工業生産は前年比+4.3%増で、市場予想+3.7%を下回る(フィスコ)

●7.中国の出産数は1,062万人(2021年)と、1949年の建国以来で最小(毎日新聞より抜粋

 1)中国政府は、2015年に「1人っ子政策」を廃止し産児制限を緩和していた。教育費の高騰や、男女の人口の歪みなどから少子化が速まっている。

 2)中国では毛沢東が主導した「大躍進」運動(1958~1961年)で多くの餓死者を出した。これまでは1961年の出世数が最小だったが、これを下回った。

 3)2021年は主産数が死亡者数(1,014万人)に肉薄しており、人口減少の到来が目前に迫っている。

■III.日本株式市場

●1.日経平均の推移

 1)1/17、日経平均+209円高、28,333円(日経新聞より抜粋
  ・最近の下落が▲600円超と急だったのを受け、自律反発狙いの買いが入った。
  ・為替も円安・ドル高で、輸出採算の改善を見込んだ買いもあり、トヨタが上げた。
  ・本日の日経平均は一時+300円を超えたが、利益確定の戻り売りが上値を抑えた。
  ・東京都などの「まん延防止重点措置」の適用拡大も上値を重くした。
  ・大成建、清水建、NEC、富士通が買われ、東邦鉛、JFEなどが下落した。

 2)1/18、日経平均▲76円安、28,257円(日経新聞)
  ・米長期金利が上昇し、短期筋の金利変動への警戒が強まり、日経平均先物を売ったことから幅広い銘柄が押し下げ、一時下げ幅が▲200円を超えた。
  ・引けきかけて、主力銘柄に値ごろ感から買いが入り、下げ幅を縮めた。
  ・鉄鋼株、キーエンス、スズキが売られ、ファストリ・キーエンス・任天堂が上昇。

 3)1/19、日経平均▲790円安、27,467円(日経新聞より抜粋
  ・終値ベースで、昨年8/20以来、5カ月ぶりの安値を付けた。
  ・前日の米株式市場の下落を受け、東京市場でも幅広い銘柄に売りが広がった。
  ・米株価先物が軟調に推移し、日本の株価先物の売りを誘い、円高進行で輸出採算の悪化を懸念した売りも出た。
  ・ウクライナを巡る米ロの緊張も懸念材料として意識された。
  ・マイクロソフトの米ゲーム大手買収を受け、ソニーの下落率が▲12%となったことも投資家心理の悪化につながり、半導体関連株も売られたが、ゲーム関連が買われた。

●2.日本銀行の「政策維持方針は正しいか?」、『物価抑制のため、早期金利引上げ』を

 1)日銀は1/17~18の金融政策決定会合において、現状の大規模金融緩和の維持を決定した。理由は、物価上昇見通しが1.1%と、目標2%に達していないとして『据え置き』とした。

 2)果たして、その決定で良かったのだろうか?
  ・昨年の物価上昇は低くやっと+0.1%と上昇したが、そこから+1.1%への上昇率でみると短期間でかつ大きい。
  ・まして3月からの製品値上げ予告が各社から公表されている。原油価格の急騰と農産物の価格上昇もある。政府は賃上げを要求し、最低賃金も引上げた。交通費の値上げも近い。企業はコスト上昇を売値に転嫁できなかったが、我慢が出来ない状況になり値上げラッシュとなり、生活に直結しそうだ。

 3)日銀はインフレ対策を打つ時期にある。
  ・米国FRBの金融引き締め策は、想定より加速している。米国金利は上昇を始めているが、すでに日米金利格差が拡大している。それが為替に反映して『円安・ドル高となり円安進行』している。円安の結果、交易条件が悪化し日本の輸入物価が上昇するのは目に見える。
  ・日本経済の成長率は低く、世界の成長率から見劣りしている。『円安進行で、原油はじめ輸入物価は上昇し、企業収益は圧迫され国内景気は後退』の可能性が高まる。物価上昇で消費者の財布は強く締められ、消費支出は伸びなくなる。さらに、円安進行で高騰する原油購入額が増え「貿易収支が赤字」になるおそれがある。このまま推移すれば、『景気後退の中の物価上昇』で『スタグフレーション』に陥るリスクが日本にある。
  ・今こそ、先手で『利上げで、インフレの芽を退治する』ことが重要ではなかろうか。インフレ加速後で確認してからでは、日銀の政策は『後手・後手』となり、急坂を転がるのを止めることの困難を増すだけとなりやすい。インフレ対策として『金利引上げで円安阻止し、インフレ抑制』を速めに実施する時期だと思う。

●3.市場と乖離する岸田首相の発言、株価下落リスクに(ブルームバーグ)

●4.企業動向

 1)INPEX 島根・山口沖の国内海洋ガス田を30年ぶり新規開発へ(NHK)
      令和14年生産開始を目指す。
 2)ウエルシア 大阪のドラッグストアのコクミン、フレンテを子会社化 (WWDJAPAN)
 3)トヨタ   堤工場がコロナ感染で一部停止、1,500台生産に影響(ロイター)
 4)ダイハツ  コロナ感染で滋賀・本社池田工場の一部稼働停止(自動車新聞)
 5)商船三井  宇徳とダイビルのTOB成立(時事通信)

■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)

 ・6143 ソディック  業績好調。
 ・6289 技研製    業績堅調。
 ・3141 ウエルシア  業績堅調。

著者プロフィール

中島義之

中島義之(なかしま よしゆき) 

1970年に積水化学工業(株)入社、メーカーの企画・管理(財務含む)を32年間経験後、企業再生ビジネスに携わる。 現在、アイマックスパートナーズ(株)代表。 メーカーサイドから見た金融と企業経営を視点に、株式含む金融市場のコメントを2017年から発信。 発信内容は、オープン情報(ニュース、雑誌、証券リポート等々)を分析・組み合わせした上で、実現の可能性を予測・展望しながらコメントを作成。http://note.com/soubatennbou

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