海外投資家の日本株離れと、「プライムでなくていい」とする企業の一考察

2021年12月15日 16:52

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 外国人投資家の「日本株離れ」が懸念されている。事実、東証の「投資家主体別売買動向」では外国人投資家のこんな結果が明らかになっている。

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 11月は第1週こそ1236億600万円の買い越しも、第2週以降は1週の買い越し額を上回る売り越しに転じている。11月の総計では、5106億5000万円の売り越し。12月も第1週は1254億500万円の売り越し。自己(証券会社の自己売買)も売り越し。「外国人投資家の日本株離れが、証券会社動向に反映されている」と捉えることが出来る。

 外国人投資家の日本株離れは、「MSCI指数の変化に象徴的」とされる。周知の通り米国の金融サービス大手:モルガン・スタンレー・キャピタル・インターナショナル(MSCI)は、約70カ国・地域の株式市場をカバーし、指数を発信している。MSCI指数(インデックス)は、内外の機関投資家や投資信託のベンチマークとして活用されている。

 MSCIは11月、インデックスの構成銘柄を見直した。日本株は約600数十銘柄が採用されているが、今回はそのうち15社(14社+投資法人)を外した。ヤマダHDやカシオ計算機をはじめ、日本ハム・東北電力・日本精工など知られた企業が名を連ねている。東証が進めている市場改革で、「プライム市場」の重要条件とされる時価総額100億円を大幅に上回る企業揃いである。

 MSCI構成企業からの排除となると、具体的にどんな事態が起こるのか。大和証券の試算では、「11月の銘柄入れ替えで、投信に組み込まれていた約2200億円分が売却された」という。

 ところで、MSCIに関する報道と期をほぼ同じくして日経新聞電子版が『東証1部146社「プライム」選ばず 日本オラクルや白洋舎』と題する記事を配信した。ちなみに前記の時価総額でみると日本オラクルは悠に基準を上回っているが、白洋舎は30億円ほど下回っている。

 146社に関しては「移行基準の是非」をチェックしなくてはならないが、東証は既に移行に関して「1次通知」を東証1部企業に伝えている。そして「(条件を満たすための)猶予期間」を表明していた。興味を覚えるのは「猶予期間」にかかわらず「スタンダード(プライムの下に位置する)でOK」とした企業の、今回の東証改革の捉え方である。

 例えば、滝沢鉄工所。時価総額は60億円水準。スタンダード選択の何故を、こう公にしている。「プライム基準(を満たす)にはコストと労力を要するものがある。自社の規模も踏まえて本業に経営資源を振り向けることが、企業価値向上につながる」。

 MSCI除外やプライム移行NOだけで、企業価値が変わるものではあるまい。要は自社を取り巻く環境を冷静に判断し、企業価値(収益)向上を図ることこそが正道ではではないだろうか。(記事:千葉明・記事一覧を見る

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