付属病院の背任事件で注目を集める、日大・田中英寿理事長の不都合な話 (上)

2021年10月15日 16:28

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 日本大学を揺るがす背任事件は、日本大学理事の井ノ口忠男容疑者と錦秀会グループ前理事長の籔本雅巳容疑者が8日、揃って逮捕される事態に発展した。

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 これまでの報道によると、捜査の発端は、20年に独禁法違反(不当な取引制限)の舞台になった独立行政法人「地域医療機能推進機構」を巡る談合事件の捜査過程で、日大傘下の「日本大学事業部」や錦秀会グループに関連する不透明なカネの流れが、検察の目に留まったことだ。

 日本大学事業部は、今回の事件で逮捕された井ノ口容疑者が権勢を振るっていたとされる。錦秀会グループは、3医療法人と、学校法人、社会福祉法人、NPO法人の他に、3企業と1財団で構成される医療関連の一大グループで、籔本容疑者は理事長の職にあった。

 地域医療機能推進機構の談合事件では、21年6月30日、スズケン、東邦薬品(東京・世田谷)、アルフレッサ(東京・千代田)の3社に対して、各2億5千万円の罰金が科せられている。談合事件に区切りをつけた検察が途中から並行するように捜査して来たのが、談合事件を構成する主役の存在を霞ませるほどの、不透明なカネの流れを関連書類の中に残していた日本大学事業部や錦秀会グループだ。

 報道によると、関係者の話では、井ノ口容疑者はリベートなどを、現金で人目に付かない場所でのやり取りとすることに拘っていたという。企業間の資金のやり取りまで全て現金にすることは不可能だから、井ノ口流の隠ぺい工作は破綻していた。日大では情報をリークした下手人探しが行なわれていると伝えられたが、とんだお門違いといったところだろう。

 老朽化の進行により建て替えられることになった日大医学部付属板橋病院の契約業務は、日大が全額出資する日本大学事業部に委託された。井ノ口容疑者は、20億円でプロポーザル方式に参加しようとしていた佐藤総合計画に対して、26億円で参加するように誘導。プロポーザルの得点改ざん行為まで行なわせて同社を選定したという。

 設計会社を決定する際の日大の理事会で、井ノ口容疑者は「日本大学事業部の交渉により24億4000万円に減額させた」という説明をしていたというから、やりたい放題のイメージだ。

 着手金の7億3000万円から2億2000万円を抜いていたことを考えると、最終的には合計で4億4000万円を抜く腹積もりだったのかも知れない。24億4000万円引く20億円は4億4000万円となる。たとえそうなったとしても、当初20億円で参加するつもりだった佐藤総合計画にとって、痛くも痒くもない話だし一連の流れを考えると断れる立場でもない。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る

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