100億年以上前に誕生した褐色矮星を偶然発見 NASAジェット推進研究所

2021年9月2日 08:09

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惑星、褐色矮星、恒星の違い 左側が惑星、中央が褐色矮星、右側が恒星である。(c) NASA/JPL-Caltech

惑星、褐色矮星、恒星の違い 左側が惑星、中央が褐色矮星、右側が恒星である。(c) NASA/JPL-Caltech[写真拡大]

 褐色矮星とは、ウィキペディアによれば"その質量が木星型惑星より大きく、赤色矮星より小さな超低質量天体の分類である"とされている。つまり核融合ができるほどの質量を持たない恒星になれなかった天体である。

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 この褐色矮星は磁場を持つため強い電波放射を伴い、太陽系外の惑星を探索する中では強い電波放射をする天体として発見される場合が多い。また天空の写真を注意深く観察して、非常に暗く光る天体として発見される場合もある。だがこのような方法とは異なるアプローチによって、100億年以上前に誕生したと思われる褐色矮星がアマチュア天文家の手によって偶然発見されたと、NASAジェット推進研究所は8月31日に発表した。

 この褐色矮星はアクシデントと命名されているが、NASAの地球近傍天体広域赤外線サーベイエクスプローラーNEOWISE(地球近傍天体を探索するための赤外線宇宙望遠鏡)の撮影画像から発見された。アマチュア天文家は、自ら考案したプログラムにより、撮影時期の異なる複数のNEOWISE画像から、静止赤外線天体を削除。既知の褐色矮星と同様の赤外線特性を持つ移動天体を強調表示する処理画像により観察していたところ、強調表示されないで高速移動する天体を偶然発見したのだ。つまりこの褐色矮星は従来知られていた褐色矮星とは異なる特性を持っていたため、強調表示されなかったのだ。

 アクシデントは既知の褐色矮星の赤外線特性と比べると、ある波長では非常に強度が弱く、また別の波長では強度が高いという、科学者たちを混乱させるような特性を持っていた。だが、強度が弱い波長の赤外線特性から、この褐色矮星が誕生から非常に時間が経過している存在であることがわかった。

 科学者の推測では、この星は誕生から100億年ないし130億年が経過しているものと見られ、この値は褐色矮星の平均的な年齢(約60億歳)の約2倍に相当する。また、後日実施されたNASAのハッブル宇宙望遠鏡とスピッツァー宇宙望遠鏡による正確な距離測定によれば、地球から50光年しか離れていないことや時速80万kmという猛烈な速度で移動していることもわかっている。

 今回の発見から、褐色矮星は従来考えられていたより、多様性を持った天体である可能性が示唆される。多様性を意識した様々な試みが今後展開され、現在銀河系内で約2000個発見されている褐色矮星の数はうなぎ上りに増えていくかもしれない。(記事:cedar3・記事一覧を見る

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