日本もタクシー専用車時代

2021年8月24日 07:14

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Photo:トヨタのタクシー専用車JPN TAXI(画像: トヨタ自動車の発表資料より)

Photo:トヨタのタクシー専用車JPN TAXI(画像: トヨタ自動車の発表資料より)[写真拡大]

  •  Photo:京都の小型個人タクシー市場ではライバル車より余裕があって好評だった

●トヨタのJPN TAXI(ジャパン・タクシー)

 日本にも漸く「タクシー専用車両」が普及し始めた。2017年にトヨタがJPN TAXI(ジャパン・タクシー)を市場投入したことによる。

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 従来はオーナーカーと共通ボディ形状の「クラウン」、「セドリック」に代表される中型タクシーと、「コロナ」、「クルー」等の小型タクシーが主力車種で、一部ミニバンも使われていた。

 また最近は、ハイブリッド車の燃費がLPG車の燃料経済性とそれ程変わらないので、「プリウスα」とか「カムリ」を良く見かける様になっていた。

 「アクア」を使う法人タクシーも見かけたが、あんな小さな車で、海外旅行のトランクを持って、空港に行けないだろうと、流石に経営者のがめつさに呆れた。

●カースタイリング誌

 モーターファン誌を発行する三栄書房にカースタイリングという書籍があった。

 1973年に創刊、世界唯一の和英両文カーデザイン専門誌だった。2010年、三栄書房刊行の隔月刊自動車デザイン専門誌『CAR STYLING』(カースタイリング)は、4月19日発売の通巻196号(2010年5月号)をもって休刊した。

 同誌は、各自動車メーカーの開発時のイメージ画像や、結構専門的な内容にも拘わらず、固定ファンが多かった。このカースタイリング誌に、40年以上前になるが、ニューヨーク近代美術館が主催した「タクシー車デザイン」に関する記事が掲載されたことがあった。

●本物に触れてみる

 丁度、大阪支社で近畿管内、特に大阪と神戸の市場への、タクシー車両拡販プロジェクトに取り組んでいた時期で、社内の資格試験の論文作成タイミングとも重なっていた。

 そこで、詳細が知りたくて、ニューヨーク近代博物館に手紙を書いて、同館が取り纏めた「タクシー車デザインコンペ」の結構立派な冊子を取り寄せた。

 世界規模のデザインコンペだけに、いろいろなコンセプトを盛り込んだ各国のタクシーや、タクシー車のコンセプトモデル記事が新鮮だった。

 アメリカのタクシーには乗車経験があったが、名高いロンドンタクシーにも、実際に乗って見たくて、ロンドン~パリのツアーに参加し、フリータイムにわざわざTAXIに乗るだけの目的でロンドン市内移動もして見た。

●当時の日本のタクシー

 そんな40年近くも昔の日本のタクシーは、中型車なら「クラウン」、「セドリック・グロリア」が双璧で、2000㏄で5ナンバー枠(全長4700mm×全幅1700mm)内ぎりぎり。

 小型車は、1500㏄クラスの「コロナ」、「ブルーバード」が主要車種だった。

●大阪の中型タクシー市場

 マツダは一時期、大阪のタクシー市場で一定のシェアを獲得した実績がある。当時の大阪のタクシー市場は、中型が中心で、小型と歴然と区別されていた。

 京都では定員5名の小型タクシーでは、ルーチェがライバルのコロナやブルーバードより余裕があると好評で、個人タクシーで結構なシェアを獲得していた。(画像2参考)

 しかし、中型車主流の大阪や神戸での中型車の代表はクラウンとセドリックで、極めて少数の個人タクシーに、趣味半分で乗っている外車や、愛着を持って使い続けている大昔の車が居る程度だった。

 中型タクシーの乗車定員は6名と決められていた。フロントがベンチシートで3名が座れることが必須で、ハンドルコラムシフトのマニュアルミッション車が一般的だった。

 中型タクシーは、クラウン、セドリックの寡占市場ではあったが、ルーチェのタクシー車は燃費が良くて、距離を走るタクシーでは、燃費がらみのランニングコストで競争力があり、一時期は或る程度のシェアを確保した。

●結局同型車がどれだけ世に出ているか

 しかし、大きなハンディキャップがあった。

 タクシー車に事故はつきもので、前後のフェンダーや、ボンネット、トランク、前後左右のドアと、いろいろな形態の事故があった。

 一般市場のルーチェ自体のシェアが低いから、事故車も少なく、脱着したパネル類が解体業者に少量しかストックされていない。

 板金修理で治せない程度の事故になると、例えば右フェンダーとボンネットフードだったら、新品の「右フェンダー補修用パネル」と「ボンネットフード補修用パネル」が必要となる。

 しかし、クラウンやセドリックは市場シェアも大きく、自家用車の事故車から脱着したパネル類が容易に手に入る。勿論価格も、新品部品とは較べものにならない。

 結局、もしタクシー車が事故と無縁なら、燃費の良さで圧倒的な優位性を発揮出来ただろうが、事故補修コスト等の総合的なランニングコストで敗退することとなった。

●日本も漸くタクシー専用車の時代に

 トヨタ・JPN TAXI(ジャパン・タクシー)は、一般自家用車では無いから、事故車から回収された解体パーツのメリットは使えないが、本格的に普及しつつある。

 トヨタの「圧倒的な体力」と、ライバルだった日産の弱体化や、適合車種ラインナップが淋しい状況から見て、40年にして漸く「タクシー専用車両」の時代がやって来た様だ。(記事:沢ハジメ・記事一覧を見る

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