流星の大気圏突入をシミュレーション スイス連邦工科大の研究

2021年6月18日 08:42

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 彗星は楕円軌道を描いて、太陽の周りを公転しているが、その過程で公転軌道上にちりをばらまいてゆく。このちりの粒子を専門用語でダストボール流星物質と呼ぶのだが、これが大気圏に突入すると大気との摩擦熱により、発光して流星となる。1等星級の明るい流星になるダストボール流星物質の質量はおおむね1g程度で想像以上に小さくて軽い。そしてそれらの流星が発光している時間はたった1秒にも満たないはかない命である。

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 恒星の寿命が数百万年から、数千億年と非常に長いのに比べて、流星の寿命は本当にはかない。そんな理由からか従来、流星が発光するメカニズムに関する研究は、それほど脚光を浴びることがなかった。だが、Nスイス連邦工科大学の研究者による流星の大気圏突入シミュレーションの研究論文が、6月14日にヨーロッパ南天天文台が発行する天文学術雑誌「Astronomy and Astrophysics」で公開されたので、今回はその情報を紹介する。

 彗星がばらまいていったちりは、しばしば流星群をもたらす。例えば真夏の盆休みに出現のピークを迎えるペルセウス座流星群は、スウィフトタットル彗星がもたらしているものである。逆の言い方をすれば、流星群と呼ばれるものは必ずそれをもたらしている母彗星が存在している。中にはふたご座流星群のように、ファエトンと呼ばれる小惑星(もともとは彗星であったものが、揮発成分を蒸発しつくして小惑星になったもの)を母天体とするものもある。

 今回発表された研究論文は、ジャコビニツィナー彗星を母天体とするジャコビニ流星群を取り上げている。この流星群は、大気圏突入速度が秒速24kmと比較的低速だ。研究では、200kmの上空でこの初期速度を想定したシミュレーション行い、大気圏突入直後にダストボール流星物質のサイズは約半分に圧縮されることが判明した。その後高度120kmの位置において流星は崩壊するが、その間に流星物質が回転を伴っており、崩壊のプロセスはダストボール流星物質の組成に左右されることが判明した。

 論文では他にも、解析モデルに関する情報、解析に用いた方程式や物性値の情報などが詳細に発表されている。(記事:cedar3・記事一覧を見る

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