政府が推薦する銘柄!? 「攻めのIT経営銘柄」が「DX銘柄」に変わったワケ 前編

2021年4月13日 07:35

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 昨今、コロナ禍によって非対面・非接触のコミュニケーションの必要性が急速に高まったといえるが、日本国内の企業は、先進国の中でもデジタル化に遅れを取っていることは、紛れもない事実である。

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 出社ありき、対面ありきの文化は根深く、テレワークは形骸化し、紙やハンコ文化から脱却できないどころか、慌てて新設されたデジタル庁においても立ち上がりで法案資料にミスが続発するなど、前途多難だ。

 しかしコロナ禍に先立ち、デジタル化が進まない国内企業に早くから警鐘を鳴らしていたのは、何を隠そう経済産業省であった。コロナ禍が発生した約1年半前の2018年9月に「DXレポート~ITシステム『2025年の崖』の克服とDXの本格的な展開~」を公開しているのだ。

 このレポートは、それほど遠くない未来に対して具体的な経済損失を示したという意味で、非常に衝撃的な内容だ。既存システムの刷新に遅れればDXが阻害されるとして、「日本全体の経済損失は、2025年以降、毎年最大12兆円」「DXのために2025年までにシステムを刷新すべき」「デジタル化に遅れれば競争の敗者となる」という圧倒的なホラーストーリーを展開したのである。

 今でこそ一般的に広まったといえる「DX(デジタル・トランスフォーメーション)」という言葉は、このレポートによって知られるようになったわけだが、DXとは単なるデジタル化ではなく、その名のとおり、デジタル化によって多種多様な変革が起こされることに期待が込められた言葉であり、企業が生き残るためには必要不可欠な取り組みだ。

 例えば、NETFLIX社は無店舗型のDVDレンタルサービスからスタートしているが、VOD(ビデオ・オン・デマンド)とサブスクリプションモデルで大成功を収め、業界の勝者となった。レンタルビデオやレンタルDVDという概念を破壊して業界を淘汰するだけではなく、アメリカのTV業界にもメスを入れることになった。

 このような状況のなか、日本国内においては個人に対するデジタル化の普及が早かったにも関わらず、DXの成功事例に乏しい。これは、欧米諸国に比べてROE(自己資本利益率)が低いという日本人独特の「守り」の文化が根付いているからともいえる。資産の回転は投資運用にとっても重要であるが、日本人は「投資」よりも「貯蓄」の文化なのである。(後編に続く)(記事:小林弘卓・記事一覧を見る

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