新型コロナは皮膚上で9時間残存 インフルより5倍長い 京都府立医大の研究

2020年10月14日 11:57

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ヒトの皮膚上における残存期間について、京都府立医大の研究。IAVがインフルエンザ、SARS-CoV-2が新型コロナウイルス(京都府立医科大学の発表より)

ヒトの皮膚上における残存期間について、京都府立医大の研究。IAVがインフルエンザ、SARS-CoV-2が新型コロナウイルス(京都府立医科大学の発表より)[写真拡大]

 今もなお感染拡大を続ける新型コロナウイルス。環境中に残存する期間は、プラスチックやステンレスなど、物の表面を対象にした実験で明らかにされていたが、人の体内や皮膚などでどのくらい残存するかは分かっていなかった。

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 そんな中、京都府立医科大学の研究チームが、新型コロナが皮膚上に残存する期間は、インフルエンザより7.2時間長い9時間であるとの研究成果を発表した。新型コロナはすでに致死率や感染力が、季節性インフルエンザや2009年の新型インフルエンザより高いことが分かっているが、今回の研究により、対人接触による感染リスクも高いウイルスであることが再認識された。

 一方で、適度なアルコール消毒で感染効果が消失することも同時に確認され、研究チームは「十分に対策可能な感染症である」と示唆した。

■インフルエンザの5倍近い残存期間

 研究は、接触感染によるリスク評価と、有効な感染制御方法を特定するのが目的。司法解剖や行政解剖といった法医解剖で使用された献体(遺体)の皮膚を使い、新型コロナの残存期間やエタノール系消毒液の有効性について調べた。

 すると、インフルエンザが1.8時間で感染効果が不活化されるのに対し、新型コロナは9時間程度残存し続け、インフルエンザより、接触感染による感染拡大のリスクが高い可能性が示唆された。

 一方で、皮膚上に塗布された新型コロナは、濃度80%のエタノールを15秒間消毒することで、完全に感染力を失うことが判明。研究チームは、「エタノール消毒液を使った手指衛生で、感染予防に十分効果がある」と結論付けた。そのほか、皮膚表面における新型コロナの残存期間は、ステンレススチールや耐熱ガラスといった物の表面より大幅に短く、人の皮膚表面が抗ウイルス性であることも研究で明示された。

■9時間という残存期間は感染拡大に十分か

 エタノール消毒で新型コロナの感染効果が消失する成果は光明にも見えるが、インフルエンザより長い9時間という残存期間は重く受け止める必要がある。皮膚に残ったウイルスが口や喉、目の結膜を通じて体内に侵入する接触感染の特性上、この残存期間が感染に十分な時間と捉えられるからだ。

 またこれまでの研究で、新型コロナは、陶器や金属、プラスチックといった物の表面で、2~6日間潜伏することが分かっており、これらの長期に渡る潜伏期間が人から人への感染を容易にしたとされている。皮膚上における残存期間は、感染を防ぐ対策になり得ないかもしれない。

 ともあれ、今回の研究が感染経路の特定などで、重要な知見になったのは間違いない。物から人への感染確率などを割り出すなどし、研究の精度をさらに高めれば、新型コロナの生存期間に関する研究が今後の衛生対策の充実に向けた大きなステップとなるだろう。(記事:小村海・記事一覧を見る

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