【BEVか?水素エンジンか?】BEV航続距離2倍も 「全固体電池」量産化間近か

2020年9月3日 07:50

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 エネルギー密度2倍と言われる全固体電池の開発が、いよいよ大詰めである。これまでのリチウムイオン電池は、プラスとマイナスの磁極の間に電解質として電解液を使用していた。全固体電池では電解質を固体として、エネルギー密度を2倍にしようとしているのだ。自動車用全固体電池の量産も、いよいよ近づいている。

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 これまでのガソリンエンジン車は、「ガソリン」としてエネルギーを車両に蓄えていた。「エンジン+ミッション+ガソリン」をパワーユニットとして備えていた。だが、それを同じ量の「モーター+電池」とした場合、電解質が液体のリチウムイオン電池では極端に最大航続距離が短くなって実用にならなかった。

 そこでBEVは、重量が100kg~200kg重くなることを覚悟で電池をたくさん積んでいた。それでも最大航続距離は300km~500km程度にとどまり、車両重量の重さが気になる状態が続いている。さらに充電時間においては、1時間程度の急速充電で80%と効率が悪く、ガソリン車の給油時間10分程度に比べ、実用性で追いつけなかった。

 しかし、電解質を全固体とすることでエネルギー集積度を2倍とすることが出来れば、最大航続距離が2倍となる可能性が高く、いよいよBEV(純電動車)が500kmほどの実用的最大航続距離を持つことになるのだ。また、充電時間も80%急速充電で15分程度とすることが期待出来る。

 これでBEVが急速に普及する可能性が出てくることになる。充電スタンドには設備投資がそれほどかからず、コンビニに備えることも出来て、ガソリンスタンドよりも手軽になる可能性が高い。全固体電池なら電池による重量が重くならないため、荷物の搭載量もガソリンエンジン車よりも増やせる可能性も見えてくる。

 だが、BEVの普及が進むことで問題となるのが、自動車産業の雇用人数が半減することだ。また、電池のリサイクル技術と費用の問題を解決しなければならない。

 そのため最近、ガソリンスタンドを含んだこれまでの自動車産業全体を維持出来る、水素エンジンとの競合が急速に取り上げられるようになっている。近未来の世界で、どちらを選ぶのかが問題となろう。カギは、欧州の燃費規制の決め方によるだろう。トヨタのHVが脅威であった欧州だが、今度は雇用の確保が脅威となるのだ。

 水素エンジンを利用した水素社会は、石油依存のエネルギー施策を基本的に変えることが出来るため、BEVでは問題として残っている発電によるCO2排出を減らすことも含めて、解決出来るストーリーが見えている。人類の現状の文明からすると、「水素エンジン」は、成り立ちの基本からBEVよりも優れているかもしれない。

 一方、全固体電池が実用になり、大量生産出来る体制がもう目の前だ。全固体電池の開発が進みBEVが普及してくると、産業構造の変化が起きることとなる。また、中国では発電に原子力利用が進んでいる。2度3度の世界の産業構造への衝撃を避けるため、また地球温暖化を避けるため、「BEVか?水素エンジンか?」早急の判断が必要だ。(記事:kenzoogata・記事一覧を見る

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