いて座方向の分子雲から駒のように回転する有機分子を発見 東京理科大など

2020年8月30日 16:52

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高密度の分子雲(左)では分子の回転は頻発するが、低密度(右)だと発見が難しい。(画像: 国立天文台の発表資料より(c) Mitsunori Araki)

高密度の分子雲(左)では分子の回転は頻発するが、低密度(右)だと発見が難しい。(画像: 国立天文台の発表資料より(c) Mitsunori Araki)[写真拡大]

 星の材料となる分子雲には、水素などさまざまな分子が含まれている。国立天文台野辺山宇宙電波観測所は25日、いて座方面の分子雲から駒のように回転する有機分子を発見したと発表した。

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■さまざまな分子を含む星間物質
 星と星の間には、ガスや塵からなる星間物質が存在し、その中でも星間物質の密度が高い領域は分子雲と呼ばれる。星間物質の大半は水素分子だが、分子雲には一酸化炭素や水、アンモニア等の単純な分子からメタノールや酢酸等の複雑な有機分子まで含まれている。

 これまで200種類を超える分子が星間物質として発見されている。だが分子雲では水素の占める割合が多いため、これらの分子は水素分子と衝突することで回転しているという。

 高密度の分子雲では、水素分子と他の分子との衝突が頻発するため、分子の回転運動を比較的捉えやすい。だが密度の低い領域では衝突が少ないため、これまで分子の回転が顕著な領域は見つかっていなかった。

■回転する分子発見に用いられた新手法
 東京理科大学の研究者らから構成されるグループは、低密度の分子雲中において、分子の回転運動を捉えようと試みた。宇宙空間内の分子の発見には電波望遠鏡が使用され、通常は、分子から放たれる電波を捉える方法により行われる。だが今回は、分子が吸収する電波の様子を捉える方法が試みられた。

 研究グループが注目したのは、分子雲中に存在する有機分子の中でも代表的なアセトニトリルだ。アセトニトリルは細長く対称性のよい形を持つため、駒のように回転しやすいのだという。

 45メートル電波望遠鏡を持つ野辺山宇宙電波観測所で観測を実施した結果、天の川銀河の中心付近にあるいて座の分子雲から、駒のように回転するアセトニトリルが顕著に多い領域を発見した。研究グループによると、今回の発見からアセトニトリルのより正確な量も把握できるという。

 アセトニトリルは代表的な星間分子であるため、分子雲内の有機分子の量や分布を把握するのに重要な意味を持つ。今後は、宇宙でどのように生命が誕生したかの探求に、今回の研究が貢献することが期待されるとしている。

 研究の詳細は、英国の王立天文学会誌にて10日に掲載されている。(記事:角野未智・記事一覧を見る

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