北の達人コーポの「事実は小説よりも奇」

2020年7月29日 07:51

印刷

 「事実は小説よりも奇」を、北の達人コーポレーション(以下、北の達人)の創業者社長:木下勝寿氏を取材して実感した。

【こちらも】北の達人コーポは何故、起業の地を北海道に求めたのか

 幼少の頃から「漠然でしたが会社をつくり社長になるという思いを抱いていた」と言う。神戸生まれの神戸育ち。関西大学に学んだ。学生企業に参画した。卒業後「多数の起業家を輩出していたリクルートに就職した」のも、起業の準備のためだった。

 5年後、満を持して独立。日用品販売業を興した。1年目は順調。だが2年目に入ると売上は低下傾向へ。「売上高にばかり目が向き、顧客の満足度を忘れていた」。それなりに考え策は打ったが、財布の中身が50円になっていた。起業早々の第1の躓き。継続を断念した。生活のために肉体労働に身を置いた。約1年。「やはり、起業が捨て切れなかった」。

 「顧客の満足度こそ肝心」を頭に叩き込みパソコン2台を抱え、第2の起業の地を求め「平成の屯田兵」よろしく北海道に渡った。

 木下氏は「TVドラマの『北の国から』の影響で北海道が大好きで、何回となく旅行に行っていた。北海道には活用し切れていない資源が山ほどあった。北海道人気質は実に真面目。豊富な資源を道産子気質の力を借り、普及期を迎えていたインターネットを介して全国に向けて販売しようと考えた」とした。

 北の達人の創業は2000年(法人化02年)。無手勝流のスタートだった。「起業するので商品を卸して欲しい」100余社に懇願。「応援してやろう」と名乗りを上げてくれた企業は4社。ホームページを立ち上げ、カニ・メロン・ジンギスカンなどの特産物のネット通販を開始。月商10万円に達したのは半年後。軌道に乗るまでの1年間は「肉体労働との二足の草鞋」。

 しかし「よし」と思う間もなく、取り込み詐欺に見舞われ全財産を失った。が、踏ん張った。甲斐あって04年に「日本オンラインショッピング大賞(EC研究会)」受賞。知名度向上。が、それが裏目に。腐心したサイトのデザインや付帯サービスが「うり二つ」のサイトが続出、価格競争に巻き込まれた。

 知恵を絞った。例えば、味は変わらないが足が折れたカニなどの『わけありグルメ専門サイト』を立ち上げた。大受け。ニュース・ドキュメント・バラエティ番組に年30回以上取り上げられた。だが、人気化は大手資本の競合参入という事態を招いてしまった。

 相次ぐ苦い体験から『すぐに真似されるような商品・サービスでなく、誰にも真似できないものを提供し顧客がうちから離れたくなくなるようにしよう』という、今日の北の達人の「道」に至った。

 昨春に消費者庁から「機能性表示食品」の認定を受けた「カイテキオリゴ」は、目下の売れ筋商品。原石:オリゴ糖は広く知られる。その原石に磨きをかけ、通便効果が認められる宝石:カイテキオリゴトウに止揚した。

 前2月期の売上高営業利益率は28・8%(EC上場企業平均2・4%)。躓きを重ねて手にしたものである。(記事:千葉明・記事一覧を見る

関連キーワード

関連記事