巨大惑星誕生の謎を解明する 若い木星型惑星を発見 NASAの研究

2020年6月23日 17:22

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恒星に非常に近い位置にあると想定される木星型惑星のイメージ。(c)  NASA/JPL-Caltech

恒星に非常に近い位置にあると想定される木星型惑星のイメージ。(c)  NASA/JPL-Caltech[写真拡大]

 太陽が誕生して50億年、地球が誕生して46億年と言うように太陽系は誕生から50億年が経過した歴史の古い存在である。いっぽう太陽系には惑星が8個しかなく、惑星誕生の謎を解明するためにはあまりにもサンプル数が少ない。

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 しかも太陽系には木星や土星のような巨大惑星と地球や火星のような岩石惑星があり、それぞれの誕生の謎解明は、さらに少ないサンプルを用いて行わなければならず、非常に無理のある研究課題であった。

 最近になり、観測技術の進歩のおかげで、4000個以上の太陽系外惑星が発見されている。したがって、特に巨大惑星の誕生の謎解明については、以前とは比べ物にならないほどの数のサンプルを用いて研究を進めることが可能になってきている。

 6月23日にNASAは、つい最近発見された太陽系外にある木星のような巨大惑星「HIP 67522 b」の情報を公開した。それによれば、この惑星は非常に若く、誕生からまだ1700万年しか経過していない。しかも、そのサイズは木星の直径の約0.9倍で、木星に非常によく似た惑星であることが推測される。

 従来太陽系外で発見された木星型惑星で最も若い存在は、誕生から10億年が経過したものであったため、誕生間もないHIP 67522 bの発見は、巨大惑星誕生の謎解明にとっては朗報である。つまり、従来は木星の歴史について誕生から10億年後の姿を想像することはできたが、それ以前の若いころの木星がどんなであったのかは想像の域を脱しなかった。だが、HIP 67522 bの発見により、誕生から1700万年後の木星の姿をイメージすることが可能になったのだ。

 HIP 67522 bは主星の周りをたった18時間で公転している温度の高い惑星である。この惑星はNASAの太陽系外ミッションTESSによって発見され、トランジット法と呼ばれる恒星を横切る暗い影の分析によって、その存在が確かめられた。

恒星にある黒い影には太陽の黒点もあるが、黒点は周期性を持った移動をしないため、暗い影の軌跡を慎重に分析すれば、それが黒点なのかそれとも惑星が構成表面を横切っているためにできた影なのかを識別できる。

 ちなみに前出の誕生から10億年が経過した木星型惑星の公転周期は7日であるため、3つの木星型惑星(HIP 67522 b、誕生から10億年が経過した惑星、太陽系の木星)の情報から、巨大惑星は誕生直後は主星のごく近傍を公転しているが、時間の経過とともに主星から離れた軌道を周回するようになることがわかる。

 NASAは、巨大惑星は誕生して間もない主星の表面で起きた爆発によって、主星から分離した存在なのではないかという仮説を立てているが、研究はまだ始まったばかりであり、その信憑性についてはこれから明らかにされてゆくことだろう。(記事:cedar3・記事一覧を見る

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