新型コロナの迅速診断法を開発 唾液から25分で判定 検出機器も不要 東京医科大など

2020年5月16日 18:00

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検査の手順(画像: 東京医科大学の発表資料より)

検査の手順(画像: 東京医科大学の発表資料より)[写真拡大]

 東京医科大学の河島尚志主任教授と日本大学の桑原正靖教授は14日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染有無を迅速に判定する診断法を共同開発したと発表した。この新しい診断法は、患者から検体を採取して25分ほどで結果が出ることに加え、PCRと同程度の高い感度を持つという。

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 また採取する検体は、鼻咽頭ぬぐいの綿棒だけでなく、唾液や喝痰でも良いため、検査時に医療者が感染する危険性を減らすことができる。特別な機器を必要としないことから、診療所などで簡易に検査を行うことができるという。

 この診断法は、11日に東京医科大学と日本大学が合同で特許出願した。

 この検査の迅速さの理由は、一つは、PCR検査に必要な核酸(遺伝子)の抽出作業が不要なことだ。検体をそのまま前処理液と混合し95度で2分処理することにより、測定の準備ができる。

 もう一つの理由は、遺伝子を増幅させるとき、PCR検査では高温と低温のサイクルを多くの場合2時間程度繰り返す必要があるが、新検査法では革新的核酸増幅法(SATIC法)を用いることで、37度で20~25分程度にて行えるということだ。さらに、陽性のときは試験管内のナノ磁性ビーズが凝集するため、目で見て判定できる。

 研究グループがこの検査法の感度について検討したところ、COVID-19遺伝子のコピーが10個あれば陽性と判定でき、非常に感度が高いことがわかった。また、同じ検体をPCR法とSATIC法両方で検査したところ、陽性・陰性の結果は完全に一致。このことより、十分に正確性が高いことも明かになったとしている。

 今後COVID-19の流行をコントロールしていくにあたって、街の診療所や空港などでも、簡易かつ迅速に、そして安全で正確性が高く、感染の有無を検査していくことも必要となるだろう。今回開発された診断法は、現時点ではまだ特許申請中ではあるが、今後重要な役割を果たしていく可能性も考えられる。

 現在、COVID-19の診断方法として保険が適用され医療現場で利用できるのは、PCR検査と抗原検査だ。PCRはウイルスの遺伝子を検出し、抗原検査はウイルスのタンパク質を検出する。

 抗原検査は、いわゆるインフルエンザの検査と同じ仕組みで、15~30分で結果がわかることや、医療現場で行えることが利点だ。一方、精度の面でPCRより劣ってしまう。SATIC法による検査は、正確さと迅速さを兼ね備える検査法であり、今後臨床の現場で利用されることにより、それぞれの特長を生かした検査が行われていくことが期待できる。(記事:室園美映子・記事一覧を見る

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