EVは本当に環境に優しいか?

2020年3月20日 12:18

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Photo:太陽光発電システムのパネルと直結コンセント ©sawahajime

Photo:太陽光発電システムのパネルと直結コンセント ©sawahajime[写真拡大]

●EVは災害時の非常電源にふさわしいか?

 電気自動車(EV)を災害時の非常電源に利用できると、「フル充電したEVで一家が〇日暮らせる」とやっているのを見た記憶がある。

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 調べて見たら、日産リーフの特設Webサイトでは蓄電機能のある日産リーフの新たな活用法として、太陽光発電でフル充電したリーフの電気で一軒家3人家族が何日間暮らせるか、を訴求していた。

 ここでは、3人家族の1日の電気使用量を約12kWhとし、4日を想定している。

【参考までに】
 リーフの特設Webサイトには以下の記載がある。

 ※一般家庭での1日あたりの使用電力量を約12kWh/日とした試算値。V2H等の変換効率は含みません。
 ※一般家庭での1日あたりの使用電力量=約12kWhは平成31年3月環境省「平成29年度 家庭部門のCO2排出実態統計調査」地方別世帯あたり年間電気消費量から算出。(世帯あたり年間消費量全国平均4,322kWh÷365=11.8kWh)
 ※実際の電力使用量は、使用環境、住環境、季節等の条件により増減します。
 ※日産リーフから住宅へ電気を供給するには別売りの「V2H機器」が必要です。詳しくは日産のお店のカーライフアドバイザーにおたずねください。


 先ず、自宅に「太陽光発電」を設置している家庭で無ければ、災害時に電力会社からの電気の供給が断たれた家でEVに充電する事は不可能だ。

 それに加えて、EVから住宅へ電気を供給するには、別途「V2H機器」が必要だ。この「V2H機器」は一般には100~200万円するとされる。

 ネットで調べて見たら、179万8000円、79万8000円とかがヒットし、2019年6月にニチコンが発売した、39万8000円のものが一番安い様だ。

 いつ発生するか判らない大規模災害に伴う長期停電の為に、わざわざ屋根に「太陽光発電」設備を設置し、「V2H機器」まで備えた上で電気自動車を積極的に購入する事が賢明な判断なのか。

 EVに対して懐疑的な筆者の自宅は、「太陽光発電」設備を設置してあるが、もしEVを保有していても、万一の災害時に住宅へ電気を供給する為に、わざわざ高価な「V2H機器」は購入しない。

 長期停電になったら、自宅は冷蔵庫を「太陽光発電からの直結コンセント」に繋いで、自身はホテルへ避難するだろう。

●EVは本当に環境に優しいか?

 先ず指摘したいのは、「3人家族が暮らす一軒家の4日分」もの電気で、EVは僅か300~400㎞しか走れないと云う事。

 そして、ここでの設定条件は「太陽光発電」だが、普段は電力会社から供給される電気を充電して使っているはずだ。

 東日本大震災での福島原発事故発生以来、「原子力発電」の比率が2000年の34%から2017年には3%と低下し、「石炭火力発電」比率が81%と高い。

 「自分の車はEVだから排気ガスは出さない」と考えているかも知れないが、そのEVの蓄電池に充電する電気を作り出す段階で環境汚染している事は、認識しておく必要がある。

 エキゾーストパイプから排気ガスを出していないからと云って、「ゼロエミッション」とは云い過ぎだろう。

●本当に環境に優しいのは何か?

 世界中で本当に環境に優しいのは、ミライに代表される「燃料電池自動車」か、水素そのものを燃料とする「水素エンジン車」だけだ。

 「燃料電池」は、水の電気分解の逆をたどる事で、水素を燃料として発電するディバイスで、そのディバイスで発電した電力を使って電動モーターを駆動して走行するものだ。

 つまり自家発電をしながら走る電気自動車で「水素(H)」を空気中の「酸素(O2)」と結合させるだけだから、酸素と水素が結合した「水(H2O)」しか出さない。水素エンジンは、文字通り水素を燃料として「水素(H)」を空気中の「酸素(O2)」で燃やすので、同じく「水(H2O)」しか出さない。

 「燃料電池自動車」や「水素エンジン車」の普及には「水素インフラ」整備が不可欠だが、万一燃料エンコした場合の救援は、ガソリン車、ディーゼル車、LPG車と同程度で比較的容易である。

 「水素社会」の到来が待ち遠しい。(記事:沢ハジメ・記事一覧を見る

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