日本郵政グループを揺るがす不適切販売問題 (1) 無責任な役員を戴く悲劇

2019年12月26日 08:44

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 日本郵政グループの保険分野を担当する、かんぽ生命保険で発生した不適切販売に関して、外部弁護士等で構成する特別調査委員会の中間報告書が18日に公表されている。

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 当初は年内に最終報告がまとめられる予定だったが、調査対象が18.3万件にも及び法令や社内規定違反と疑われる件数が想定を超えたため、来年3月の最終報告を目指して作業が継続されることになった。販売員が違反を犯したと認定されると、資格停止などの処分が下される。拙速に進めて誤認事例が発生すると、人権問題という二次被害の懸念があるため、より慎重な調査が必要と判断された。

 中間報告では調査対象となる18.3万件のうち、80%の14.8万件について顧客の意向確認が終了し、違反が疑われる1万2836件が焙り出された。最終判定を終えたのは、そのうちの約20%に当たる2487件で、その中には48件の法令違反と622件の社内規定違反が含まれている。まだ顧客の意向確認が必要な先が約3.5万件あり、最終判定が未了の先も1万件超に上る。

 今回の調査に並行して、日本郵政グループが行ったアンケート調査によると、約4万人の販売員の50%程度が「職場内で不適正な募集が行われていた」という認識を示していたことが分かった。ところが、募集に当たった日本郵便の社内では、優秀成績者には獲得実績に見合う成果報酬のほかに、食事会へ招待するという社内接待が行われていた反面、成績不良者は大声で罵倒されるなどの、アメとムチの露骨な使い分けが行われ、不正を指摘しにくい雰囲気が醸成されていた。

 昨年、シェアハウスローンで社会の耳目を集めたスルガ銀行でも、優績者に対する過大な成果報酬と成績不良者に対する極端な恫喝行為が話題になったが、日本郵政グループ内でもほとんど同時期に同じような不適切行為が行われていたことになる。

 当時のスルガ銀行の取締役は「雲の上から下界を見る」様な存在と評され、勤務実態や不適切な契約には無関心だったと総括されたが、日本郵政グループも、営業の進め方に疑問を投げかけるNHKの番組とその職員に強烈な抗議を再三に渡って行いながら、肝心の”不適切な契約”には無関心を貫いた。

 NHKへの抗議を仕切ったのが、元総務省事務次官としてNHKに羽振りを利かせていた日本郵政の鈴木康雄上席副社長だった。NHKへ送った抗議文の文面には、”かつて放送行政に携わり・・・放送法改正案の作成責任者だった”と言わずもがなのコメントまで、記載していた。「NHKにとって圧倒的に優位な総務省」という”虎の威を借る狐”みたいな行為だ。

 鈴木上級副社長にわが身を顧みる謙虚さがあれば、昨年の盛夏の時期には不適切販売の実態に触れていた筈だ。もっとも日本郵政グループを仕切る日本郵政の長門正貢社長が、未だに「初めて取締役会の議題になったのは今年の7月だ」と主張していることを考えると、似たり寄ったりの無責任で無関心なトップが2名、日本郵政を牛耳っていた悲劇を呪うしかないだろう。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る

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