「ニッサン・インテリジェント・ファクトリー」 ゴーン呪縛の「逆さまビジネスモデル」を改革

2019年12月5日 08:20

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次世代のクルマづくりコンセプト「ニッサン インテリジェント ファクトリー」を発表する坂本 秀行執行役副社長。(画像: 日産自動車の発表資料より)

次世代のクルマづくりコンセプト「ニッサン インテリジェント ファクトリー」を発表する坂本 秀行執行役副社長。(画像: 日産自動車の発表資料より)[写真拡大]

 日産が動き出している。これまで日産では、それぞれの車両開発が進められ、それを生産する方法が考えられてきたが、生産の平準化を進めるには、設計段階から多種の車種を出来るだけ同一の車種として生産できる生産技術開発が必要である。

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 これまでの日産は、「逆さまビジネスモデル」であったと言える。生産技術の遅れが資金需要を増やして、資金効率を落とし、有利子負債を増やすことで、事実上日産は倒産した。一方、トヨタは、いつも日産に先んじて「トヨタ生産方式」の開発を進めていた。

 そこに、日産にはルノーの資本が入り、カルロス・ゴーンが登場して再生してきた。ゴーンが采配している時でも「生産技術」の遅れが心配だったのだが、M&Aやグローバル発注など金融施策を優先した経営は、コストカッターの異名を持つカルロス・ゴーンの得意とするところで、日産の再生がなってきた。しかし長期的に見ると、ルノーとの「一体的協調生産システム」などが必要で、トヨタのTNGAなどには後れを生じていた。

 そして現在、遅れを取り戻すかのような「ニッサン・インテリジェント・ファクトリー」は、トヨタのTNGA、マツダの「スカイアクティブ・テクノロジー」などと比較してどのような位置を占めているのかは、もう少し詳細が分からないと判断できない。発表された内容からはごく常識的方向性であり、後れを出していたところを回復させる製造技術を含めた開発が行われているようだ。

 (1)未来のクルマをつくる技術 (2)匠の技で育つロボット (3)人とロボットの共生

 この3要素では何も分からない。

【パワートレイン一括搭載システム】
 パレット上にパワートレインに必要な部品をセットすると、ロボットが組み立てる方式のようだ。パレットに載せるだけで組み立てできるのが要であろう。TNGAなどのように設計段階から共通化したプラットフォームを設計できていない状況をカバーできる考え方なのかもしれないと、少々期待している。また、ルノー・日産・三菱の3社連合であることのデメリットを解消できるのかもしれない。

【シーリング塗布の自動化(匠の技の自動化) 】
 これは常識的なところで、内容として発表する必要があるのかと思うくらいだ。AIの導入で可能になる範囲が広がるのかもしれない。むしろ、「匠の学校」を創設するなど、自動車製造の基礎技術を保全する努力を見せてもらいたい。この発表はユーザー向けや社員向けであって、専門家向けではないのであろう。

【革新塗装ライン】
 製造技術に属する開発だが、注目は「工程結合」だ。生産技術でコストダウンを図るのなら、分かれている工程を結合させる効果は計り知れない。「ボディとバンパーの同時塗装が可能」がキーとなろう。環境技術については、むしろ表面上の宣伝効果といったところだ。
 
 生産ラインでは、従来のロボット化の方向性にAIに人間と同じ判断力を持たせることで、さらなる「工程結合」が可能とできるかが問題だ。工程数が減ることは在庫数を減らし、作業場所、在庫取り扱い設備、管理システムなど資金量を大幅に減らすことに繋がる。これがコストダウンの要だ。

 TNGAとの比較はこの情報ではできないが、匹敵する効果を日産にもたらすことを願っている。ようやくカルロス・ゴーン体制からの脱却を果たし、ビジネスモデルの革新が始まったのであろう。期待が膨らむ話だ。「頑張れ日産!」。(記事:kenzoogata・記事一覧を見る

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