恒星誕生の謎解明へ オリオン座大星雲のHFガス放出起源 オランダの研究

2019年11月11日 08:44

印刷

 秋も中盤に差し掛かり、夜半にはオリオン座が東の空に昇り始めるころとなった。誰もが知っているこのオリオン座のおへその左下あたりに大星雲M42がある。この星雲は地球から約1300光年の距離にあるガス状の散光星雲で、内部では新しい恒星が誕生しつつある。なかでもトラペジウムと呼ばれる4重星は、まだ誕生したばかりの恒星たちで、M42における主役ともいうべき存在である。

【こちらも】惑星誕生の謎に迫る 仏天文学者ジョズ・デ・ボーアの挑戦

 このトラペジウム周辺のガス雲を調べることで、これからどこで恒星が誕生しようとしているのかを突き止めることが期待できる。それが分かれば、その領域を継続的に観測してゆくことで恒星誕生のメカニズムをリアルタイムで観測できることになる。

 恒星が誕生しようとする領域を探るためには、恒星の原料となるガス状の水素分子の濃度分布を観測し、マッピングすることを研究者たちはもくろんでいるのだが、水素分子はその存在や濃度分布を観測できるような強い信号を発することがない。このため水素分子の存在を直接確認するのには困難を極めている。

 11月6日にフランスのAstronomy&Astrophysics誌に公開されたSRONオランダ宇宙研究所の研究によれば、水素分子の濃度分布を間接的に知る方法として、フッ化水素HFの観測が威力を発揮することが明らかにされている。

 しかしながら水素分子の濃度分布を知るために、なぜ水素分子とは異なるHFガスの観測が有効なのか素人にとっては理解に苦しむ問題である。以下でその理由を分かりやすく解説する。

 一般的には水素分子の存在を知る手掛かりとしては、星間ガスのなかに水素分子と一緒になって微量に存在しているCOガスを観測する方法が試みられている。しかしトラペジウム周辺では炭素がイオン化してしまい、COガスの観測が困難であることが判明している。

 だが、星間ガス中のCOガスがイオン化する際にフッ化水素HFが放出されることが突き止められたため、このHFガスの信号を観測することで、間接的に水素分子濃度分布を知ることが可能となったのである。

 そのため今後HFガスの信号強度分布をマッピングデータとして集積してゆくことで、M42の内部のどの領域で新たに恒星が誕生するのかを、精度よく推定していくことが可能になるだろう。実は恒星誕生のメカニズムについては、正確なことはよく分かっていない。この研究が順調に進めば、何年か先には恒星誕生メカニズムが明らかになり、ひょっとしたら、人工太陽を稼働させるのも夢ではなくなるかもしれない。 (記事:cedar3・記事一覧を見る

関連記事