フレキシブルで軽量な有機太陽電池、発電効率向上の鍵を解明 分子科学研

2019年10月18日 11:42

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(a) 高結晶性・高移動度の有機半導体材料の分子構造と、(b) 太陽電池の電流電圧曲線(画像: 分子科学研究所の発表資料より)

(a) 高結晶性・高移動度の有機半導体材料の分子構造と、(b) 太陽電池の電流電圧曲線(画像: 分子科学研究所の発表資料より)[写真拡大]

 現在の無機材料で出来た太陽電池に比べて安価で軽く、フレキシブルな「有機太陽電池」が近年では注目されている。有機太陽電池は電圧損失が大きく、光電変換効率が無機太陽電池と比較して低いことが課題であったが、分子科学研究所の研究グループは16日、有機太陽電池の電圧損失の抑制により、高い光電変換効率が実現可能であることを示した。

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 有機太陽電池に電圧損失が生じる原因の中で最も大きいとされてきたのが、電化再結合によるエネルギー損失である。つまり、せっかく光の照射によって生じたエネルギーが太陽電池内で消費されてしまいやすいのである。無機太陽電池も同様の課題を長い歴史の中で克服してきたが、有機太陽電池においては有効な方策が示されてこなかった。

 今回、分子科学研究所の研究グループは、有機太陽電池に用いる分子の結晶性に着目した。

 有機太陽電池の発電はドナー材料、アクセプター材料と呼ばれる2種類の材料の界面で発生する。アクセプター材料の界面側の結晶性を向上させると、有機太陽電池の電圧値が高くなることが今回の研究で判明した。アクセプター材料の結晶性は構造の異なる分子を用いることによって調整されている。

 この傾向は、アクセプター材料の界面から離れた部分の結晶性を低くしても、同様であることが確認されている。つまり界面の近く、正確には分子3個分ほどの領域の結晶性が性能において支配的なのである。

 この実験で得られた20%超の発電効率は、現在の無機太陽電池の中でも高効率なものと同等の水準である。今回の成果は簡易的な二層型のモデルデバイスで得られたものであるため、実用的なデバイス構造への応用展開が期待される。

 界面面積が大きく実用的な混合型の有機太陽電池でも同じような性能が得られれば、実用化の可能性は一気に広がる。さらに、フレキシブル性やコスト性、軽量性などの有機太陽電池ならではのメリットを生かした開発が望まれる。

 研究の成果は、8日のApplied Physics Letters誌に掲載されている。

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