できる理由を「センス」と言うと他人はそれを活かせない

2019年7月4日 18:10

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 仕事を通じて、抜群の成果を上げる「できる人」がいます。
 確かに、ほぼ同じ仕事を同じ条件でしているにもかかわらず、営業成績や事務処理量、顧客満足などといったことに、大きな差がつくことがあります。その理由は「能力が高い」「頭が良い」「優秀」などと言われることが多々あり、それらを総合して、「センスが良い」などと説明されます。
 ただ、ここで「センス」という言葉を使われてしまうと、「他人には真似できないこと」のいうイメージが強くなりますが、それは本当に他人には真似できない、その人固有の特別な職人芸なのでしょうか。

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 確かにアスリートのように持って生まれた資質が大きく、他人に真似できないセンスはありますが、一般的なビジネスの中で、そこまで先天的な資質に左右されることは、非常に少ないはずです。しいていえば、手先の作業など、同じことを反復して数をこなして身につけるような仕事で、それをマスターするのが早かったり、品質が高かったりすることは「センス」と言えるのかもしれません。しかし、ほとんどの仕事は、反復や熟練しか身に着ける手段がないものではありません。

 ビジネスの場で「センスが良い」というのは、少し言い換えると「要領が良い」「状況に応じての行動が的確」などとなります。そして「センスが良い人」は、この「場に即した適切な行動」をある程度“直感的”にやっているところがあります。本人は直観的、条件反射的なので、なかなか他人に説明できません。いろいろ聞いても「それくらいは常識じゃない?」などといわれます。

 成果につながる行動というのは、ほとんどが一般的、常識的に言われるような行動で、それをきちんと積み重ねて実行しているかどうかが、成果が出るか否かの分かれ道になります。
 もちろん話術や駆け引き、相手が望んでいることを的確なタイミングで実行する見極めなど、瞬間的に判断しなければならないことはありますが、必要な場面で必要なコミュニケーションを取る、約束を守る、決められた作業の手を抜かない、さぼらないなど、当たり前のことの積み重ねが重要な位置を占めます。

 ただ、どんな仕事でも、コツや勘所と言われるポイントがあり、それを知ることで身に着ける速度を高めることができます。「センスが良い」と言われる行動を分解して説明すれば、他の人が真似することができます。
 それによって、最低限実行しなければならないことが明確化され、それをみんなが確実に実行していけば、みんなの成果が上がります。すべてではありませんが、「センスの良さ」には真似できる部分がたくさんあります。
 できる人とできない人で、具体的な行動の違いを比較すると、成果につながりやすい「センスの良い行動」が見えてきます。

 成果が上がっている理由を「センス」といって終わらせてしまうと、その人の持つノウハウは、他の人は誰も活かすことができません。違いを洗い出せば、やるべきことも見えてくるはずです。

※この記事は「会社と社員を円満につなげる人事の話」からの転載となります。元記事はこちら。

著者プロフィール

小笠原 隆夫

小笠原 隆夫(おがさわら・たかお) ユニティ・サポート代表

ユニティ・サポート 代表・人事コンサルタント・経営士
BIP株式会社 取締役

IT企業にて開発SE・リーダー職を務めた後、同社内で新卒及び中途の採用活動、数次にわたる人事制度構築と運用、各種社内研修の企画と実施、その他人事関連業務全般、人事マネージャー職に従事する。2度のM&Aを経験し、人事部門責任者として人事関連制度や組織関連の統合実務と折衝を担当。2007年2月に「ユニティ・サポート」を設立し、同代表。

以降、人事コンサルタントとして、中堅・中小企業(数十名~1000名規模程度まで)を中心に、豊富な人事実務経験、管理者経験を元に、組織特性を見据えた人事制度策定、採用活動支援、人材開発施策、人事戦略作りやCHO(最高人事責任者)業務の支援など、人事や組織の課題解決・改善に向けたコンサルティングを様々な企業に対して実施中。パートナー、サポーターとして、クライアントと協働することを信条とする。

会社URL http://www.unity-support.com/index.html

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