高品質な油がより多くとれるダイズを開発 基礎生物学研究所

2019年6月24日 11:45

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形質転換株の種子は親株と比較して肥大化し、油脂含量が増加した。(画像:基礎生物学研究所発表資料より)

形質転換株の種子は親株と比較して肥大化し、油脂含量が増加した。(画像:基礎生物学研究所発表資料より)[写真拡大]

 ダイズの油は、現在、世界の油脂生産の中で第2位の地位を占める。食用油として用いられるのは当然として、バイオ燃料、バイオプラスチックの原料としても需要が拡大している。そんなダイズ油の品質と収量を高めることに、基礎生物学研究所の金井雅武研究員と真野昌二准教授らの研究グループが成功した。

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 基本的なところから説明していくと、まずダイズというのは種である。他の主要な搾油植物である菜種やゴマなどもそうである。これらの植物は、種子の中に多量の油脂を蓄積する性質を持つ。本来は、発芽のエネルギー源として利用するためだ。我々人類はその油脂を食用や工業製品の原料、バイオ燃料などに利用しているわけである。

 ダイズの種子が育っていく過程において、油脂は合成され蓄積されていくが、同時にその一部は分解されているということを研究グループは発見した。それに関わっているのは、油脂の分解酵素の一つ、Glycine max SUGAR DEPENDENT-1 (GmSDP1) 遺伝子である。これがどういった理由でそうなっているのかは謎であった。

 そこで、GmSDP1の役割を明らかにするために、GmSDP1の発現を抑制した形質転換株のダイズを作成し、解析を行った。発現抑制株は通常のダイズよりも大きくなり、油脂の含有量は増加した。

 またもう一つ分かったのは、GmSDP1はリノール酸よりもオレイン酸を積極的に分解する、ということである。ダイズは特定の脂肪酸を選択的に除去し、油脂中の脂肪酸組成をコントロールする仕組みを持っているということだ。

 油脂合成をコントロールすることで油脂の収量を増やす研究は多いが、油脂の分解に着目し、油脂の品質改良をコントロールする研究は珍しいものであるという。

 研究の詳細は、Scientific Reportsに掲載されている。(記事:藤沢文太・記事一覧を見る

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