ブラックホールはどのようにして成長するのか 矮小銀河から探る研究

2019年6月12日 08:45

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ブラックホールのイメージ。

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 りょうけん座の銀河NGC4395は、セイファート銀河に分類される矮小銀河だ。セイファート銀河の特徴は、中心に非常に明るい部分が存在し、1年以下の周期で変光する点にある。これは中心に大質量ブラックホールが存在し、その周りを秒速数千kmの超高速で「降着円盤」と呼ばれる水素、ヘリウム、窒素、酸素などの非常に明るい輝線スペクトルが観測される、中心核部分が回っているためである。

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 NGC4395の中心ブラックホールは、銀河の中心ブラックホールとしては超小型サイズである。従来、太陽の質量との比較では30万倍~40万倍程度と見積もられていたが、最近の研究で太陽の1万倍程度の質量に過ぎないことがわかってきた。

 我々の銀河系の中心ブラックホールサイズが太陽質量の400万倍であることを考えれば、NGC4395の中心ブラックホールの小ささがよくわかる。また銀河の中心ブラックホールで最大サイズのものは、地球から57億光年のはるかかなたにあるフェニックス銀河団の中心に位置するブラックホールで、太陽質量の210億倍にものぼる。

 矮小銀河は大規模な進化を経ていないと考えられ、宇宙ができたばかりのころの原始的な銀河とよく似た特徴を持っている。また宇宙が誕生して10億年後には、すでに太陽質量の10億倍の巨大ブラックホールが存在していたことが判明している。したがって矮小銀河の中心ブラックホールを研究することで、宇宙誕生初期にどのようにしてブラックホールが生まれ、超巨大ブラックホールへと成長していったのかを解明できる可能性がある。

 現在のところ矮小銀河の中心にあるブラックホールのサイズは、複数の銀河が合体していき徐々に大きなブラックホールを形成していったという仮説に対しては、否定的な大きさである。いっぽうでブラックホールの成長を、スーパーコンピュータによる解析でシミュレーションする試みもなされている。

 この解析結果によれば、太陽質量の10億倍の超巨大ブラックホールに成長するまでに要する時間は100万年程度という結果が得られている。この解析結果も銀河の合体により巨大ブラックホールが形成されたという仮説に対しては否定的で、セイファート銀河の中心で起こっているガス降着によって、ブラックホールが比較的短期間に巨大化できる可能性を強く支持するものになっている。(記事:cedar3・記事一覧を見る

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