宇宙初期の星々はジェット状の超新星爆発を起こした 東大などの国際研究

2019年5月28日 18:23

印刷

初代星の超新星爆発は、亜鉛 (図中の上下方向に吹き出すジェット部分内の緑の点) のような重元素を含んだ非対称なジェットを吹き出す爆発であった可能性が高いことが、シミュレーションから示された。このシミュレーションは、爆発の50秒後の超新星爆発の姿である。(Credit: N. Tominaga et al.)

初代星の超新星爆発は、亜鉛 (図中の上下方向に吹き出すジェット部分内の緑の点) のような重元素を含んだ非対称なジェットを吹き出す爆発であった可能性が高いことが、シミュレーションから示された。このシミュレーションは、爆発の50秒後の超新星爆発の姿である。(Credit: N. Tominaga et al.)[写真拡大]

 宇宙が誕生したばかりの頃の星々を「初代星」という。これはもう既に残ってはおらず観測もできないと考えられているが、その後に生まれた第2世代の星に残された亜鉛などの重元素の痕跡から、初代星はジェット状の超新星爆発を起こして滅びたらしい、という知見が得られた。

【こちらも】宇宙初期に誕生した銀河は今よりもずっと明るかった NASAの研究

 国際研究チームは、マサチューセッツ工科大学を中心としたもので、日本からは東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構の野本憲一上級科学研究員、甲南大学理工学部の冨永望教授、東北大学大学院理学研究科の石垣美歩学術研究員、国立天文台の青木和光准教授らが参加している。

 初代星であるが、宇宙が誕生したばかりの頃に生まれたというのがいつの話であるかというと、具体的にはビッグバンから2~3億年後くらいの時代である。この頃の宇宙には、まだ重元素が存在していなかったが、初代星の内部で熱核反応によって炭素や鉄、亜鉛などの重元素が作り出されていったと考えられている。

 この初代星は超新星爆発によって球形に対照的な爆発を起こしたというのが、従来の考え方であるが、その詳細については分かっていなかった。

 今回の研究では、2005年に発見されたHE 1327-2326という天体について、ハッブル宇宙望遠鏡搭載の紫外線分光装置であるCosmic Origins Spectrographによる観測データが利用された。この星は鉄の存在量が水素との比において極めて少なく(太陽の10万分の1以下)、おそらくは第2世代の星の生き残りであろうと考えられている。

 ところがこのHE 1327-2326、亜鉛の存在量は鉄と比較して極めて多い(太陽の6倍以上)のである。どのようにしてそのような組成が生まれたのか。それを説明するため、研究グループは1万施行以上のシミュレーションを行った。結論として、初代星がジェットを吹き出すような、非対称的な爆発を起こした場合、第2世代星がこのような状態になることが説明できることが分かったという。

 今回の研究によって、人類はまた一つ宇宙進化の謎に迫ることができた。研究の詳細は、Astrophysical Journalに発表されている。(記事:藤沢文太・記事一覧を見る

関連記事