自動運転レーサーは人間レーサーよりも速く走れるのか? AI自動運転の限界に挑む

2019年4月13日 10:17

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  AI自動運転は、「安全」を第一に考えて開発されている。その「安全」とはいったいどの様にして確保されているのであろうか。自動車は「走る」のが当然だ。それで「緊急ブレーキ」などが考えられた。さらに、日常の場面では分からない限界での運転とはどの様なことになるのであろうか。すると、当然に自動車レースの場面が考えられる。レースで安全に速く走れれば、高性能な安全車を作れることになる。

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 人間レーサーよりも速く車を走らせようとすれば、AI自動運転も進化できることになる。一般的な運転では遭遇しない条件下でAIが経験すると、どの様になるのか?実験が繰り返されている。それは、日常的な運転でも限界を知る必要があることを教えてくれる。またその技術の全てをコントロールできるメカニズムとは、どのようなものなのかは、興味が尽きない。

 『スタンフォード大学のNathan Spielberg氏を中心とした研究グループ』は、この問題に取り組んでいる。レースでのシーンでまず問題になるのが、タイヤのグリップ力の限界で走る場面だ。その時、AIは安全に走り切ることが出来るのか? 対応できるAIを育てることが出来るのか?

 こうした場面では、「重量、速度、路面状態」など条件を設定してシミュレーションを行う。しかしそれは、単純な設定であり、教師データとしては物足りないはずだ。それは、自動車製造の「モデルベース設計」にも言えることで、「現場・現物主義」を排除できるほどの詳細で広範囲の設定はなされていないはずだ。AIが必要とする「教師データ」はすこぶる不足しているはずなのだ。

 タカタのエアバッグのリコールで見られたように、エアバッグの火薬に使用期限があるとそれまでは想定されていなかったのだ。このように概念が欠落している「教師データ」では、AIも当然に概念が欠落してしまう。

 現在、自動運転のAIを育てる教師データが極端に不足しており、ある程度はシミュレーションに頼るしかないと思われている。さらに走行している車の限界での教師データは、ほとんど存在していないと考えられる。これを実験で積み上げて揃えるには気の遠くなる年月がかかってしまう。

 現在も実験が続けられているが、AIの自動運転では、理想的なレーシングラインをトレースし続けたが、人間のレーシングドライバーはもっと大きくずれていた。しかしこれはミスではなく、「人間は、その状況を判断してラインを変更できる」と解釈された。現在のところ、AIと人間レーサーは競争するのではなく「タイムアタック」の形で実験がなされているが、AIは安定したタイムで、人間のレーサーはアタックが繰り返される度にタイムを縮めてきていると言う。

 またAIには、まだFR(フロントエンジン・リア駆動)とFF(フロントエンジン・フロント駆動)の区別などは明確に認識できていないようだ。舗装路面と未舗装砂利道などの違いのデータをどの様に与えるのかなど初歩的な段階と見受ける。

 つまりその場の感触を基に、操縦方法を調整できる人間と、これまでのデータのままに操縦するAIの差が出ている。やはり、「AIを育てるには大量の教師データが必要」で、逆に『AIは大量のデータを急速に学習するのが得意』となる。

 AIが、レースのような限界状態での走行データを大量に経験し、これまでのメカニズムとの差を検知して、その場に合った操縦が出来るようになるには、データが圧倒的に不足している感がある。(記事:kenzoogata・記事一覧を見る

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