ジェネリックメーカーのサバイバル策を富士製薬の戦略にみる

2019年3月27日 18:51

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 富士製薬工業のIRセミナーを覗いた。特異なジェネリック医薬品(以下、後発医薬品)メーカーである富士製薬の今後の戦略に興味があったのと、かねて武政栄治社長が「中長期的に新薬(斯界ではブランド品と呼ぶ)と後発品の比率を5対5にする」と公言していたからである。

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 詳細は他に譲るが同社は「女性医療」「急性期医療」に特化した後発医薬品メーカーとして、相応の地位を固めてきた。が、後発医薬品企業はいま、一つの曲がり角に差し掛かっている。周知の通り現政権は社会保障費(医療費)負担増への対応策として、「2020年までに後発医薬品の比率を80%水準にする」という方向性を明示してきた。

 だがそのゴールが目と鼻の先まで迫ってきているからだ。厚労省の調べでは2017年末で、62%に達している。また日本ジェネリック製薬協会の発表では「18年7-9月期のジェネリック医薬品の使用率は73・2%」に及んでいる。数年の内に80%はクリアされよう。

 となると、後発医薬品比率向上のために打たれてきた諸策が「停止される」公算が大きい。確認の意味を込め、武政社長に質した。「後発医薬品を巡る環境は変化する、厳しくなると認識している」という答えが返ってきた。「どう対応するのか」という問い返しに武政氏は、「ブランド品5割、後発品5割の体制づくりを急ぐ」と改めて強調した。

 が、周知の様に新薬の開発には時間と大規模な資金投下が必要とされる。「富士製薬にそれだけの体力があるのか」という疑問があった。失礼か、とは思いつつも率直に疑問を呈した。返ってきたのは「ブランド品を当社はいわゆる新薬、そしてバイオシミラー(バイオ後発品)と位置付けている」だった。

 断るまでもないだろうが「バイオ医薬品」とは化学物質をベースに開発される従来型の医療医薬品ではなく、「組み換えDNA技術・細胞融合法・細胞大量培養法などバイオテクノロジーによって製造される医薬品」。日本でも17年段階で180億円の市場規模にまで拡充してきているとされる。バイオシミラーとは、その後発品である。

 富士製薬の戦略はいわゆる提携メーカーからの「導入」により、バイオ医薬品の製販権を取得し「今後も医療費抑制が求められる中での成長分野に注力していく」というものだ。

 だがこれまでの後発医薬品と比べ臨床試験結果の有無を含め、アナリストの言葉を借りれば「国内での認可申請には、提出書類だけでも(通常の後発医薬品に比べ)数倍にのぼる」という壁を乗り越えなくてはならない。一方で既に「導入によるバイオシミラー進出」の動きは始まっている。抗がん剤治療や造血幹細胞移植の補助薬「フィルグラスチム製剤のバイオシミラー」として、フィルグラスチムBS注シリンジ「F」が国内初のバイオシミラーとして承認されている。

 富士製薬の戦略の成否は見極めるには時間が必要。後発医薬品メーカーがサバイバルを賭しどんな方策・戦略を執っていくかを、興味深く見守っていきたい。(記事:千葉明・記事一覧を見る

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