宇宙滞在中の宇宙飛行士に新たな脅威 ヘルペスの再活性化 NASAの研究

2019年3月27日 08:44

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●宇宙で低下する免疫機能

 休眠していたウィルスは、免疫システムが適切に機能しなくなれば当然活性化する。さまざまなトレーニングを積み、理論的にもスキルのレベルにおいても問題ないとされた宇宙飛行士も、実際には家族から遠く離れ無重力や宇宙線被ばくなどの過酷な条件にさらされることになる。狭い空間での生活や睡眠のリズムが狂うことも、人体に多大なストレスを与えるといわれている。こうした状況下では、コルチゾールやアドレナリンなどのホルモンのバランスが崩れることも指摘されてきた。

科学誌『Frontiers in Microbiology』に掲載されたNASAの調査は、将来的に月や火星での任務を遂行する宇宙飛行士の健康状態向上のために報告されている。

●ヘルペスウィルスに注目

 研究者たちは、今回の調査において特にヘルペスウィルスに注目したとしている。ヘルペスは、人間とともに進化してきた最も一般的なウィルスであるからというのが理由である。また感染した後も、免疫機能に問題がなければ細胞内に休眠したままとどまるという特徴がある。

 研究では、宇宙に向かう前、任務遂行中、遂行後の宇宙飛行士たちの血液と尿、唾液のサンプルを採取して分析が行われた。

 その結果、スペースシャトルで短期間飛行した宇宙飛行士89人のうち47人(53%)、また宇宙空間で長期の任務にあたっていた23人中14人(61%)の唾液と尿から、ヘルペスウィルスが発見されたのである。研究の対象となっているヘルペスウィルスとは、口唇ヘルペスや性器ヘルペスの原因となる単独ヘルペスウィルス、水痘・帯状疱疹ウィルス、サイトメガロウイルス、エプスタイン・バール・ウィルスである。

●実際に症状が合われたのは6人のみ

 しかし、ヘルペスウィルスが検出された宇宙飛行士の中で実際に症状が現れたのは6人だけであり、いずれも軽症であった。今後は特に、長期のミッションにあたる宇宙飛行士たちにはそのリスクも考慮するとしている。

 また、ヘルペスの感染は免疫不全の持病がある人や新生児には危険であるため、地球に帰還した際には注意が必要である。さらに研究では、宇宙飛行士たちにワクチンを行う試みも行っているが、効果が見込めるのは今のところ水痘ワクチンのみである。

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