携帯は通信料金と端末料金が完全分離へ、関心は「いつから、いくら安くなる?」

2018年12月1日 17:34

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 菅義偉官房長官が8月21日、札幌市内で「日本の携帯電話の利用料金には4割程度の値下げ余地がある」と講演してから3カ月、いよいよ具体的な方向性が見えて来た。

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 菅長官は講演の中で「2年縛り」「4年縛り」「SIMロック」などに代表される取引システムに疑問を呈し、適切な競争原理が働くことによって大幅な引き下げが可能だという見解を披歴していた。

 総務省が11月14日に開催した携帯電話料金の引き下げなどへ向けた有識者会議で、料金値下げへのスタンスをNTTドコモ、ソフトバンク、KDDIから聴取した。携帯3社からはスマホ代金を割引きせずに通信料金を値下げする「分離プラン」の説明があったが、「分離プラン」の中にも端末契約を必要とするケースがあるため、有識者の「より明確な分離をするべき」という認識との乖離が明確になった。

会議全体の流れは、端末契約と通信契約を「完全分離」すべきだという方向で、「4年縛り」のポインドである「使用していたスマホを下取りに出して、同じ4年縛りプランに加入する」という条件に強い反発があった。携帯代理店への牽制が有効に効いていないため、キャッシュバックが横行している現状にも強い疑問があり、今後の仕組みづくりを提起する声が上がった。

 このため総務省は、携帯大手の直営店や量販店を除く約8千店の携帯代理店に対して、過度に端末料金を引き下げることや、過激な広告を規制する方法を探り始めた。具体的には、行政指導の効果を向上させるため、電気通信事業法に基づく届け出制へと格上げする方向だ。

 11月19日には、政府の規制改革推進会議が「携帯電話の通信料金と端末料金の完全分離」を明記した答申を安倍晋三首相に行った。さらに、携帯3社によって中古端末が不当に海外に流出し、国内流通の阻害要因となっていないか公正取引委員会が調査する規定を加えている。総務省は答申をもとに完全分離へのガイドラインを19年3月までにまとめる。

 11月26日には、総務省の有識者会議が分かり易い料金プランと販売代理店の業務適正化を柱とする緊急提言案をまとめた。総務省が具体的な内容をまとめて、パブリックコメントを求めた上で19年1月に正式に決定することになる。

 「完全分離」が実現すると、端末割引のために使われて来た原資が、通信料金の引き下げに充当されることが見込まれる。中古端末の国内流通が増加すると、消費者の選択肢も増える。逆に、ハイエンドモデルを購入する場合には購入時の負担が現在よりも増加する。一番肝心なことは、消費者が見える形で選択できるようになるということだ。

 携帯3社の動きをよそに、料金引き下げへの包囲網は構築された。完全分離に対応していない料金プランは、電気通信事業法違反という見方もあり、携帯3社が来年改定の料金プランにどんな形で反映させるのかが注目される。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る

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