メーカーの下請けいじめ! (4) GSのマネーゲームの果て 高経歴経営陣の「至らなさ」

2018年11月7日 21:33

印刷

 量産技術のビジネスモデルを無視した親会社からの無茶な要求が続く中、下請けの私の会社は、それではと「コスト半減」の可能性のある方法論を提案した。アンダーグラウンドで3年ほどかけて三菱商事、新日鉄の関係企業と練ってきた計画だったが、それをまともに相談できる親会社の経営者がいなかった。親会社は「縮小」ばかりを考えていたが、それは短期間の取締役の任期がそうさせていた。「自分の任期の期間だけ株主に配当しよう」と考えていたのだ。そのためコストカット以外の方策を取る気がなく、新規の営業戦略などに親会社の経営陣には関心がなかった。商売を営む企業としては「親会社は死に体」と私は見た。それでも事業を継続できる神経は異様でもあった。「これも一種のマネーゲーム」、つまり「辻褄合わせ」なのかと感じた。

【前回は】メーカーの下請けいじめ! 「あるに決まってるだろう!」(3) 業績不振による企業の断末魔

 一般論として、「業績や配当実績」だけで見ていると、「商売」「社会インフラ」としての企業とはかけ離れたところで存在価値を見出してしまうものなのだ。株式市場だけの世界だ。資金が仮にも回っていれば企業として社会に存在できる。そのため「マネーゲーム」との言葉も生まれている。むしろ「資金の回転」だけを企業と勘違いしている向きも感じる。そこに働く社員や、その企業活動の価値を買い求める消費者の存在を認識できなくなるのだ。

■GSのマネーゲームの果て
 かつてゴールドマンサックス(GS)が作ったアコーディア・ゴルフ(AG)は、資金繰りに困ったゴルフ場を安値で買収し、会員からの預かり金を反故にし、整備費などを極端に削減して、ゴルフ場としての最低限度の体裁を保ち、5年で決算を立て直して高値で売却していった。残されたゴルフ場は荒れており、整備費、設備投資などの新たな資金を必要とするほど、実質「借金」を背負わせられていた。これがGSのビジネスモデルの実態だったが、残された経営陣は自らのビジネスモデルに気付かず、相変わらず「マネーゲーム」に奔走しているうちに、平和・PGMからの「経営者のスキャンダル」を利用した乗っ取り、敵対的買収などにあってしまった。

 そのすきを突かれて「村上ファンド」に株を買い占められ、村上ファンドから言われてS-REITでゴルフ場敷地を売却し、その資金を「自社株買い」として旧村上ファンドなどの株主に持ち去られてしまった。株主に持ち去られた資金の1/10でもあれば、雨漏りするクラブハウス、錆びだらけの街灯、水はけが出来ないバンカーなど、十分な整備ができたはずだった。自社のビジネスモデルがゴルフ場運営であるにもかかわらず、その当時の経営陣は、相変わらず新規ゴルフ場の買収などマネーゲームに踊らされて、下請けではないが社員や会員が余計な苦労、出費を背負わされていたことは確かだ。

 金融知識は、必要な経営技術の一つだ。しかし、中心ではない。また全てでもない。自らの根本的なビジネスモデルを長期的に見通し、しっかりと認識することから、経営技術は始まるのだ。これは、AIに助けてもらうことが必要な項目でもあるのか?情けない思いでいっぱいだ。

■高経歴経営陣の「至らなさ」
 私たちの親会社の経営陣は、本来の量産工場のビジネスモデルを理解せず、マネーゲームだけの視野で運営すると、自社を含めてグループ全体の利益を棄損することに気付くべきだったのだ。マネーゲームでは、時には自社の存立基盤を損なってしまう危険性があるのを理解してないのは、あまりにも稚拙であった。これがその当時の「経営者自身の任期期間を意識」した、故意の施策であるのなら「犯罪」と呼ぶにふさわしい自殺行為だった。これは考えすぎなのかもしれないと感じるが、「日本最高峰の高学歴と高経歴を誇る経営陣」であるにもかかわらず、量産工場でありながら「多種少量生産」に価値を見出せなかったことは「故意による失策か?」と非難されても仕方があるまい。

 その当時から私が目標としてきたライバル会社は、現在「多種少量生産」「混流生産」「IoT整備」などで、世界最先端の企業として活躍しているのを見れば、少なくとも同じ方向性になれなかったのは「稚拙」すぎる失策だ。これは高学歴・高経歴経営陣の大きな「至らなさ」といえる。

 次は、資本主義の限界が近づいている現状を見てみよう。(記事:kenzoogata・記事一覧を見る

続きは: メーカーの下請けいじめ!(5) 自動車製造ビジネスモデルの覇権を握るのはどこか?

関連キーワード

関連記事