絶滅した北米太古の犬、起源や生態の一部が明らかに

2018年7月18日 21:44

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ラブラドール・レトリバー。

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●9000年にわたる犬の遺伝子を研究

 アメリカとロシアの共同研究として、9,000年にわたる犬の遺伝子が分析された。雑誌『サイエンス』に掲載されたところによると、北米最古の犬種は、ヨーロッパによるアメリカの植民地化に伴い絶滅したとされている。

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●シベリア大陸から人間とともにアメリカへ

 クイーン・メアリー大学のローラン・フランツ教授率いる研究班は、北米とシベリアに起源をもつといわれる71匹の犬の遺体の遺伝子を分析した。

 9,000年に及ぶ犬の遺伝子の分析により、北米の犬の形態が明らかになった。古代アメリカの犬のゲノムはシベリアの犬のゲノムとの相似が認められ、現代北米に存在する犬種との類似がなかった。つまり、北米の太古の犬は、人間がシベリアからベーリング海峡を渡ってアメリカ大陸に流入したと時期を同じくして北米にわたり、人間に飼育されるようになったとされる。アメリカの先住民社会では、犬と人間は密接に結びついていたと考えられている。輸送や狩猟のために、当時の社会では犬は非常に重要な存在であった。

 しかし、ヨーロッパから欧州原産の犬が流入し、これによって北米の犬の遺伝子は忽然と消滅してしまうのである。フランツ教授は、「この壊滅的な現象は、ヨーロッパによるアメリカの植民地と無関係とは考えられない」としている。

●古代の犬のDNAは伝染性の腫瘍に

 また、古代の犬たちの遺伝子が、犬の伝染性性器腫瘍(CTVT)に見出されたものとほぼ一致した。つまり、CTVTにり患した古代の犬たちのDNAは、交尾によって現代の犬たちに伝えられているのである。

 ケンブリッジ大学の獣医学研究者は、絶滅した犬の痕跡が伝染性のある病気によって伝えらえてきたという事実は驚くべきことだ、と語る。また、研究論文の著者の一人であるキース・ドブニー教授は、今回の調査は遺伝学的にも考古学的にも非常に重要な発見であり、今後も飼育動物の象徴ともいえる犬の研究は続くと結んでいる。

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