国立遺伝学研究所、トゲウオの全ゲノム配列から種分化の様子を解明

2018年7月2日 09:02

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左は、イトヨとニホンイトヨのオス。右は、ある染色体(ここでは第10番染色体)に観察されたゲノムの分化のパターン。(画像:国立遺伝学研究所発表資料より)

左は、イトヨとニホンイトヨのオス。右は、ある染色体(ここでは第10番染色体)に観察されたゲノムの分化のパターン。(画像:国立遺伝学研究所発表資料より)[写真拡大]

 国立遺伝学研究所は、トゲウオ科のイトヨとニホンイトヨについて、全ゲノム配列を解析、両種が種分化の過程上にあるその様子を明らかにした。

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 トゲウオ科はトゲウオ目に分類される小型魚類である。確認されている範囲で5属8種が含まれるが、実際にはもっと多くの種に分けられるのではないかと見る向きが強い。独特の巣作り、求愛、子育てなどの特徴があり、動物行動学の研究対象としてもよく利用される種である。

 さて、種というのは独立した存在である。種が異なれば、子孫を繋げることはできない(ライオンとトラ、シマウマとウマなどのように、近ければ一代雑種を作ることはできるが、一代雑種には生殖能力がない)。

 だが、同時に、同じひとつの種が進化によって複数の種に分かれるというのもよくある現象である。一つ分かりやすいその原因としては、地理的な分断がある。たとえば大陸移動などによって、もとは同じ生物群だったものが相互に孤立して代を重ねれば、やがては別種となる。

 だがそうではない場合、たとえば海などにおいて、種分化というものがどうやって完成するのかについては、実のところ謎に包まれていた。

 さて、今回の研究では、日本の太平洋岸に棲息するイトヨと、日本海岸において生息するニホンイトヨについて、全ゲノム配列に着目した研究が行われていた。なお、両種は北海道の道東などにおいてわずかに交雑が続いており、種分化の後期に位置すると考えられている。

 さて、検討の結果、両種の文化は68万年前に始まっていた。ほとんどのゲノム領域では分化が進んでいるが、一部の領域においては遺伝子配列が似通っており、それは遺伝子流動によるということも明らかになった。

 今後の研究としては、別の生物種における類似事例の検討が必要であろうという。

 研究の詳細は、PLoS Geneticsに掲載されている。(記事:藤沢文太・記事一覧を見る

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