脳科学の応用 AIとの連携や医療分野の事業が活発に NTTデータが調査

2018年6月1日 11:46

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脳科学とAIの共進化の展望図。(画像: NTTデータ経営研究所)

脳科学とAIの共進化の展望図。(画像: NTTデータ経営研究所)[写真拡大]

 NTTデータ経営研究所は5月31日、脳科学とその応用動向に関する調査の結果を発表。2018年の傾向としては、脳科学と人工知能(AI)の連携や脳情報通信技術、大規模データ取得プロジェクトに発展がみられた。事業活動はヘルスケア・医療分野において特に活発で、能力開発・人材育成分野では脳トレアプリなどのサービスが多数確認された。

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 まず脳科学とAIは親和性が高く、両者を結び付けるプロジェクトは産学官提携のうえ、世界中で実施されている。より賢い人工知能構築のためには生物の脳の理解と活用が重要であり、脳の直感的理解や創造性などの機能をどうやって機械に実装するかが今後の争点になると見込まれる。

 また脳情報通信技術の発展も著しい。脳が処理する情報は運動情報や感覚情報、健康状態、記憶、技能、価値観、好みなど非常に多様である。脳情報通信技術はそうした脳の情報を読み取ったり、逆に脳情報に書き込むような作業を、機械やヒトとコミュニケーションしながら行う技術だ。例えば電極を使って脳活動を計測したり、電気刺激を用いて脳に介入する技術が該当する。

 さらに脳科学における最新の技術を活用した大規模データ取得プロジェクトが多くの国で進展していることがわかった。国を超え、欧州や北米、アジアなどの脳研究関係者が協力する展開も確認されている。こうした大規模研究は個人差の理解に基づく商品やサービス提供を実現するデータおよび技術基盤形成につながると予測される。

 加えて脳科学は人材育成、能力開発分野に寄与する可能性が高いことが判明した。例えば集団の脳を同時に測る技術の発展は、教育場面などでその集団脳がどのように作用し結果に影響するのかを知るための重要な手掛かりとなる。

 他方、脳科学応用の動向を国、地域別にみると、商業として既に製品やサービス開発を進めている、またはその準備をしている企業は対象企業181社のうち60%が米州であった。次いで欧州21%、イスラエル8%、インドとロシアを含むアジア8%、オセアニア2%と続く。欧米が主導的役割を果たすなか、近年は特にイスラエルの企業が存在感を高めている。

 事業領域でみると医療・ヘルスケア領域が多く、特に睡眠・リラクゼーション関連技術が多数確認された。能力開発・人材育成領域では、脳トレアプリなどを使用して「認知・注意・集中力」を向上させるサービスや製品が半数以上となっている。

 なお今回の調査の主な対象は2017年1月から2018年4月までに発表された学術論文、Web上の公知情報など。応用可能性のある基礎研究や企業の取り組み、そしてスタートアップ・ベンチャー企業の情報をとりまとめた。(記事:小椋恒示・記事一覧を見る

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