クルマの基本は油圧制御 テスラもゼロ戦も同じ 電子制御で何が変わっていくのか?

2018年3月13日 05:48

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 先日、「AT車のブレーキを左足で踏む」テクニックを紹介したら、読者の中には「変則的な運転」と解釈する人がいた。MT車とAT車のブレーキペダルを比較すると、AT車は横幅が広くなっている。右足で踏むだけなら、幅広くする必要はない。実は、AT車が出現してから「左足でブレーキペダルを踏む」ことが考慮されていたのだ。そして、現実に多くの人が採用していた技術なのだ。

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 実例としては、「サイド発進」、つまり坂道でサイドブレーキを引いて、アクセルを少し開けてからサイドブレーキを離す運転技術の替わりに、多くの人がしていることだ。特に珍しいことではないのだが、知らない人もいるようだ。クルマのメカニズムに無関心になってきた昨今の情勢だが、基礎知識を持たないと「テスラ」に投資するのもままなるまい。最近、電子制御が車に多く使用されていることは認識されてきたようだが、車は基本的に油圧制御でコントロールされていることを知らない人もいるようだ。そこで、少々油圧制御について書いておくことにした。

■ブレーキは油圧制御
 「ベーパーロック現象」を教習所で勉強したことだろう。現代のブレーキはディスクブレーキ、それも放熱性の良い形式になっているのでベーパーロック現象が起きることはまれだ。しかし、現在でも皆無ではない。

 これは、そもそもブレーキが油圧制御であることの証だ。ブレーキペダルを踏むと、シリンダーが動かされて、油がパイプを通じてブレーキピストンまで移動。その圧力でブレーキパッドがブレーキディスクに押し付けられ、ブレーキが作動する。クルマを運転すれば、繰り返し幾度も使われているメカニズムだ。しかし、認識できていない人がかなりいる。箱根の長い坂道を下ってみると、かなり危ない運転をしている人が多い。

■油圧制御はゼロ戦の性能を上げ、自動車が発明されたときから主力
 油圧制御は古くから存在し、飛行機はもちろん、プレス機械、建設車両など、あらゆる機械類の動力・制御機構に用いられてきた。クルマのサスペンションも油圧制御と言えなくもない。

 国産旅客機YS-11の機構を若いころに勉強をさせられたとき、「プロペラのピッチコントロールを理解できたらYS-11の1/3は分かったことになる」と言われた。勉強してみると、ゼロ戦の機構・性能と変わらぬことに感動した。御巣鷹山に墜落した日航ジャンボ機は、4系統ある油圧操舵系統のすべてを一瞬で失ったために墜落した。現在の「フライ・バイ・ワイヤー」電子制御の最新鋭機でも油圧コントロールが残っている。それほど油圧制御は浸透しており、信頼性が高いのだ。EV・AIの進んだテスラの車体にも使われているのは間違いない。

■車の構造をよく知ることが安全を守る
 現代の電子制御が進んだ自動車こそ、使い方を誤ると「予期せぬ故障」に出会い、危険を招くことがある。その意味でテスラ車の事故には敏感であってほしいものだ。自分の立場、趣味の問題ではなく、車の基本性能をよく理解し、操作するために必要なのだ。EV・AI化を推進したいがための、「あおるような言動」は慎むべきだ。

 まもなく48ボルトバッテリーの車が増えてくる。それでも電子コントロール・ミッションは油圧制御であり続けるし、ブレーキも電子制御が加わっているが、同じように油圧制御が基本であり続けるであろう。電子制御は、油圧制御に比べてはるかにプログラムが自由に行えるキャパシティーを持っている。これからはさらに多くの電子制御が加わっていくだろうが、基本動作は油圧が受け持つ可能性が強い。(記事:kenzoogata・記事一覧を見る

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