本の流通に巻き起こる激しい変革 (1)アマゾンは本の流通をどう変えようとしているのか?

2018年2月11日 17:22

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 本は長い間、出版社から取次業者を通して書店に供給されていた。取次業者とは一般的な商品に例えると問屋に相当する存在で、生産者である出版社が取次業者を通して小売店に当たる書店に本を送り、我々は書店で本と巡り合っていた。大手の出版社は兎も角、中小の出版社には全国の書店に円滑に本を流通させる手段も資金もなかったので、必要があって生まれた有難いシステムであったと言える。

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 ところがこのシステムは、末端からさかのぼると非常に時間が掛かるシステムであった。例えば読者が欲しい本を書店に発注しても、手元に届くまでには1~2週間程度を要することが珍しくなかった。消費者が欲しい商品を小売店を通して注文するという事例は、他の商品ではほとんど例がない。一般的な商品には類似した代替品があるため、どうしても「あれが欲しい」ということはなかった。もちろん、小売店や問屋が消費者の希望する商品を個数単位で届ける機能は、そもそもなかった。

 本は非常に個別性が強い。それぞれの本は全く別物である。A作家の「〇〇について」という本の代わりを、B作家の「△△と遊ぶ」が勤めることは絶対にできない。「〇〇について」という本が書店に無ければ、個別に書店を通して発注するしかなかった。そこで、日数がかかっても読者が書店を経由して取次業者に発注するシステムが、それなりに珍重されていた。

 現在はアマゾンジャパン(アマゾン)をはじめとするネットで欲しい本を注文すると、2~3日後には読者のもとに届く。この経験をしてしまうと、もはや後には戻れない。

 アマゾンが出版業界の掟破りを続けている。昨年は直接出版社の倉庫へ出向き、沖縄を除く全国の消費者の自宅に発売日に届けるサービスを始めた。今までの、出版社->取次業者->書店->読者という慣行を見直して、アマゾンは出版社との直接取引を幅広く募っている。水面下では相当数の出版社と交渉を続けていると見られる。出版社にとっても利点がある。出版社が取次業者に払っていた、販売価格の10%程度の手数料を出版社とアマゾンで折半する。直接取引に魅力があるわけだ。

 本屋でなければ本が買えない時代は終わった。どんな本でも取り寄せることをアピールして「コンビニはマチの本屋だ」と謳い文句にする時代だ。雑誌をコンビニで買っている人たちは近年明らかに増えている。蔦屋にだって本は並んでいる。

 こうした流れを受けて、全国で書店数の減少が続いている。01年に2万1000店だった書店の店舗数が、17年5月時点には1万2500店と、17年間で40%減少した。逆に1店舗当たりの売り場面積は年々増加している。多くの書店が廃業する陰で、既存書店の拡張や新設店舗の大型化が顕著に進んでいる。ネット書店とリアル書店の間で、消費者のニーズを取り込む動きが一層激しくなっている。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る

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