【マカオレポート2017】インタビュー マカオのデザイナー6人のビジョン(1/2)

2017年11月1日 11:12

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記事提供元:アパレルウェブ

 「マカオファッションフェスティバル2017」(以下:MFF2017)が世界最大級のカジノ・リゾート「ザ ベネチアン マカオ リゾート ホテル」で開かれ(10月19~21日)、ベテランから若手まで総勢約30組のマカオ出身デザイナーが参加した。クリエイティブ産業の振興に力を入れるマカオ政府の後押しもあり、若手の台頭が目立つマカオのファッション業界。市場規模が限られたマカオを飛び出し、海外に目を向けるデザイナーが多いなか、同イベントへの参加は、自身のコレクションを対外的にアピールできる場。巨大マーケットである中華圏でビジネス基盤を固めつつ、ファッション都市・日本や韓国への進出を目指したいという声も聞かれた。マカオ出身デザイナーとしての現状やビジョンについて、同イベントに参加した6人のデザイナーに話を聞いた。

■ジェイド・レオン「JADE. L」


女性の個性を引き出すブランドでありたい

 「ユニセックスでリラックスしたリアルクローズが基本。そこに素材の組み合わせやディテールで変化を取り入れるのが私のスタイル」と自身のブランドを分析するのは、「JADE. L」デザイナーのジェイド・レオン。「ターゲットは、30~40代の独立した女性たち。そんな女性たちの個性を引き出せるブランドでありたいと思う」

 実用的なスタイルでありながら、コレクションの着想源となるものは、自身の体験から得た感覚的なものが多い。MFF2017で発表した2017秋冬コレクションは、レオンが英国に実際に行った際に感じた「どこか霧がかった色彩や、悲しみの感情」をカラーリングに反映させている。

 台湾実践大学でファッションデザインを学び、ファッションデザイナーとして働いたのち、2016年に自身のブランドを立ち上げた。現在の取り扱い店舗は、マカオと台湾のコンセプトショップが中心。中国発のメッセージアプリ「WeChat」が運営するモバイル向けショッピングサイト(微店)を通じて、中華圏のお客も増えている。「政府の支援もあり、マカオではファッションブランドを立ち上げる環境が整っているが、マーケットが小さいので、ビジネスを広げようと思ったら、やはり海外に目を向ける必要がある」。見据える市場は、台湾、香港、中国。「ネットショッピングに慣れていて、ネット上で服を買うことに抵抗のない消費者が多いことが理由の1つ」だという。

 将来的には、アジアのファッション都市である日本や韓国にも進出するのが夢。「これまで台湾や香港の展示会には出展したことがあるが、日本や韓国のバイヤーにはまだ出会っていない。日本には、来年の年末に向けイベントに参加したいと考えている」


「JADE. L」フェイスブック

■レオ・ウォン「Soul」


支援金を獲得 事業拡大へ
 レオ・ウォンがデザインするウィメンズブランド「Soul」は、マカオ政府文化局とCPTTMが主催するサンプル製作コンテスト「Fashion Exhibition of the 4th Subsidy Prgramme for Fashion Design and Sample Making」(以下:第4回サンプル製作コンテスト)の受賞ブランドとして、同イベントでランウェイショーを行った。白×黒をベースカラーとしたコレクションは、イレギュラーなデザインディテールや、3Dカッティングによる立体的パターンが決め手。「シルクコットンなどの上質素材を使い着心地にもこだわることで、女性の美しさを内側と外側の両面から表現している」(ワン)。価格帯は、約200~400パタカ(日本円で約3,000~6,000円)。同コンテストでは、デザインの独自性だけでなく、価格設定やマーケティングを含めたビジネスプランも評価対象となる。

 香港大学で学士号、香港理工大学で修士号を取得したウォンの実力は、2015年にチーフデザイナーに就任したユニフォームブランド「iGIFT」でも発揮されている。2017年、香港で開かれた「ワールド・ファッション・デザイン・コンペティション・アンド・アワード(WFDA)」で同ブランドは、機能部門、イノベーション部門での受賞に加え、総合優勝も果たした。

 さらに今年に入り、マカオ文化産業基金による支援金約100万パタカを獲得。ビジネス・プロモーション力・量産化の環境が整いつつあるなか、「(中国発の巨大通販サイトである)「Tmall」での売り上げをさらに伸ばしながら、国内外の展示会に積極的に参加したい」と話す。



「Soul」のランウェイショー

ユニフォームブランド「iGIFT」のデザイナーとしても、MFF2017でショーを行った。

「Soul」

■エスター・レオン「GELEE」


台湾を拠点に活動する元美術教師

 エスター・レオンがデザイナーを務めるウィメンズブランド「GELEE」。ブランド名の「GELEE」は、フランス語でゼリーの意味。あらゆる素材を掛け合わせ、様々な形に作り上げられる様子をブランドイメージと重ね合わせた。レオンの愛称でもある。

 第4回サンプル製作コンテストを受賞した作品のテーマは、“結婚式に参加する女性たち”。エレガント、クール、朗らか――式に参列する様々な女性をシルエットとディテールで表現した。ウェディングイベントの高揚感をビジューで創出している。「コンテストには、作品だけでなく、販売プランを併せた事業計画書を提出しなければならないが、ウェディングという設定や様々な女性にフィットするというコンセプトが評価された」

 国立台湾師範大学で美術の学士号を取得した後、マカオの中等学校で美術教師として約5年間勤務。マカオ政府と民間組織による非営利組織・CPTTMのインキュベーションプログラム「MACONSEF」でファッションデザインを学び、2014年に自身のブランドを設立。再び台湾を拠点に活動している。将来は、「台湾での取り扱い店舗を増やしたい。いずれは台湾、香港、そしてマカオのショールームを持つのが夢」だという。


「GELEE」フェイスブック

※金額は1パタカ=15円で計算
(取材・撮影:AW編集部・戸)

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