東京湾埋立地の帰属問題、大田区が都の調停を拒絶 提訴へ

2017年10月30日 11:52

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問題の埋め立て地。(画像:江東区発表資料より)

問題の埋め立て地。(画像:江東区発表資料より)[写真拡大]

 東京湾の中央防波堤埋立地をめぐって大田区と江東区がそれぞれ土地の所有権を主張している問題で、大田区議会は29日、東京都の提示した調停案を拒絶し、江東区に対して境界画定のための訴訟を提起する議案を議決した。

 当該の土地は、1977年から現在に至るまで、東京都のごみ埋め立て地として用いられている場所である。ちなみに、1977年というのは結構な昔のようではあるが、東京都のごみ問題の歴史からいえば比較的近年であり、この時代には、ことに都内における埋め立て処分場の扱いの難しさはかなり認識されるようになっており、長く使える処分場として様々な工夫が凝らされ、結果として、40年の長きに渡り用いられるに至っている。

 もともとこの場所は、港区、中央区、品川区を含めた5区が権利を主張していたが、現在は、地理的な接続のある江東区と大田区の2区の主張が残る状態となっている。

 東京都の示した調停案は、約500ヘクタールの埋め立て地のうち、86.2%を江東区へ、13.8%を大田区へと分割する、というものであった。

 江東区は、長年に渡り東京都のごみ問題において江東区が払ってきた犠牲の大きさを訴え、そもそも中央防波堤埋立地の建設そのものに反対した過去を挙げ、現状なおごみ運搬車が江東区を通過している現実を示し、「江東区民の犠牲の上に造成された」埋立地は江東区に帰属すると主張。この調停案に対しては、江東区の主張が認められたものであるとして受け入れの議案を江東区議会が可決している。

 しかし大田区は、過去に当該地域においてノリの養殖事業が行われていた事実などを挙げ、調停案を拒否。全面的に争う構えだ。

 訴訟となれば上級審までの争いとなることは必至と考えられ、都としては、できればオリンピックまでに、という「早期解決」の望みが絶たれた格好となる。小池百合子都知事は遺憾の意を示すとともに、「必要な対応を検討する」としている。

 ちなみに、この紛争は遡れば1977年に端を発するのだが、現在に至るまで紛争が続いている理由として、両区にはこの埋立地を開発し、新たな臨海副都心にする心算があるものと見られている。(記事:藤沢文太・記事一覧を見る

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