カンロ Research Memo(5):メーカーとしての強みは徹底した生真面目さとライフスタイル提案

2017年9月15日 15:04

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記事提供元:フィスコ


*15:04JST カンロ Research Memo(5):メーカーとしての強みは徹底した生真面目さとライフスタイル提案
■事業概要

5. 製造・企画開発面の強み
カンロ<2216>はキャンディメーカーであり、ある意味シンプルな構造となっている。しかし、シンプルだからこそ、弱みをなくし強みを磨いて差別化する必要がある。

前項では製造面の強みを紹介したことにもなるので、特に企画開発の強みを紹介する。原点の「カンロ飴」のように、素材にこだわり、素材の持つ味を最大限に引き出そうとする、メーカーとして徹底した生真面目さが同社の第1の強みである。いいモノを作るというメーカーとして根源的な欲求が「カンロ飴」や「金のミルク」のような製品を生んだと言える。

一方、同社の企業使命である「美味しさ・楽しさ・健康」を顧客に届けるため、新技術の研究開発やマーケティングにも積極的に取り組んでいる。これはまさに消費者ニーズの多様化や少子高齢化など市場の変化に対して、新しい価値と新しい市場を創造し、ライフスタイルを提案することにほかならない。そんな中で、「ボイスケアのど飴」や「ノンシュガーのど飴」に続けと、今日も市場に新製品を次々と投入している。

「美味しさ」ではフランスのコンフィズリー(砂糖菓子)の世界観をキャンディで表現し、香ばしくコクのあるキャラメルにロレーヌ産の岩塩をきかせた「濃厚ほろにが塩キャラメルキャンディ」、「楽しさ」ではキャンディの形を色えんぴつ型にした「色えんぴつキャンディ」、「健康」では「健康のど飴」ブランドより発売する、シールド乳酸菌®を配合した「健康のど飴 たたかう乳酸菌」——などである。

飴以外でも新製品を続々投入している。主力ブランド「ピュレグミ」では、フォトジェニック消費を見越したカラフルなパッケージを今秋に投入するほか、中心に濃厚なジュレを閉じ込めることで本格的なフルーツのおいしさが楽しめる「ジュレピュレ」やコラーゲンとビタミンCを強化して体の内側からキレイを応援する「ピュレグミインナーサポート」、成形製法で特許出願中のハードな3D食感が楽しい「カンデミーナグミ」などである。

そのほかでは、直営店「ヒトツブカンロ」は6月に店舗リニューアルを行い、「マチュアグミ」「ショコラ・ド・グミッツェル」などがメディアに取り上げられた。

6. 営業面の強み
カンロ<2216>の販路はスーパー(SM:GMS含む)とコンビニエンスストア(CVS)、ドラッグストア(DRUG)である。インテージのSRIによる2017年1月~6月の数字だが、キャンディ市場における各販路の売上高構成比はスーパーが46.5%、コンビニエンスストアが37.0%、ドラッグストアが16.5%であった。市場の伸びはそれぞれ前年同期比5.1%減、同1.0%減、同6.2%増、同社の伸びはそれぞれ同0.6%減、同10.6%増、同13.2%増である。同社の販路別飴・グミ別の伸びは、スーパーが飴が同1.7%減、グミが同5.1%増、コンビニエンスストアが飴が同13.7%増、グミが同6.6%増、ドラッグストアが飴が同15.9%増、グミが同6.2%増となっている。

ここで注目されるのがコンビニエンスストアとドラッグストアの飴の伸びである。リテールサポートの効果と言える。リテールサポートとは、従来営業だけで取引先に行っていたのを、開発や企画、マーケティングが同行することで、時間をかけず提案力やソリューションを大きく強化しようというものである。競争の激しいコンビニエンスストアでは取引先とのきめ細かい情報交換と製品提案、手薄だったドラッグストアや地方スーパーにも営業を仕掛けられるようになったことで、市場の伸びを大きく上回ったのだろう。2016年12月期第4四半期にスタートしたリテールサポートの効果が、2017年12月期上期には早くも顕在化しつつあると言えるだろう。

三菱商事は親会社(持分27.77%)で、三須社長始めトップマネジメントに出身者が少なくない。しかも売上高構成比で95%以上もある大きな取引先でもある。しかし、同社は製造から販売まで専業メーカーとして独自の理念や戦略に基づいて行動している。三菱商事の主な役割は与信管理にあり、ほかに新規取引先開拓のサポートや一部原材料の調達である。特段に与信管理を三菱商事に任せることで専業メーカーに専念することができる。これも強みの1つだろう。

一方、同社にも弱みがあると考えている。市場参入は早かったもののシェアが取り切れていないグミ、使用シーンが拡大しているもののいまだ参入していない錠菓、販路もドラッグストアや地方スーパーでは出遅れている可能性が高い。ノウハウの蓄積やロングセラーの活躍など長所となっていた「老舗」が裏目に出て、変化への対応が鈍くなっているのではないかと懸念している。

実はこの弱み、もちろん社内では何年も前から分かっていたことだろうが、「老舗」に依存・安住するのでなく「老舗」を進化させなければならないということを、今般同社が改めて認識したのであろうと推測している。なぜそのような推測をしたかというと、カルピス問題後の主力ブランドへの経営資源の集中や営業方法の変更、投資計画など、「老舗」の同社にとってかなりリスクの高い戦略が相次いでいるからである。そのようなリスクを取った戦略は、相当の危機感と覚悟がなければできないことだからだ。そしてそれを集約したのが中期経営計画「NewKANRO 2021」だと理解している。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)《TN》

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