産総研、ガラスの基本単位であるオルトケイ酸の結晶作成に成功

2017年8月15日 21:26

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記事提供元:スラド

masakun曰く、  J-PARCセンター施設公開2017のストーリーでリンク先にアクセスしたとき気付いたが、産総研の触媒化学融合研究センターのプロジェクトチームがガラスの基本単位であるオルトケイ酸の結晶化に成功したと報じられている(J-PARCプレス発表EE Times Japan)。

 19世紀前半にイェンス・ベルセリウスにより溶解性のシリカ (オルトケイ酸) が発見されたが、その組成が「ケイ素上に4つの水酸基-OHが結合した分子構造」であることが分かったのは20世紀に入ってから。しかもテトラアルコキシシランや四塩化ケイ素の加水分解によってオルトケイ酸は生成するが、速やかに脱水縮合しシリカに変わるため、今まで単離できず詳細な構造は不明だった。そこで産総研では水を使わないオルトケイ酸の合成反応を開発し、オルトケイ酸と加えたアンモニウム塩からなる単結晶を得ることに成功。「X線結晶構造解析の結果、オルトケイ酸は正四面体構造であり、ケイ素-酸素結合の平均結合長は0.16222ナノメートルで、酸素-ケイ素-酸素結合の平均結合角は109.76度であった」。さらに「中性子結晶構造解析により、酸素-水素結合の平均結合長が0.0948ナノメートルであることも分かり、世界で初めてオルトケイ酸の詳細な分子構造を明らかにした」という。

 オルトケイ酸はガラスやシリカに代表される無機ケイ素材料やシリコーンなどの有機ケイ素材料の基本単位構造であるため、この合成手法は現在産総研で取り組まれている次世代の高機能シリコーン材料の開発に役立つと期待されている。またイネ科の植物は天然のオルトケイ酸を取り入れシリカとして蓄積することで、物理的に丈夫になるだけでなく病原菌にも強くなっている。そのメカニズムの解明にも役立つだろう。

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