タイトルに二重の意味、『リバース』ドラマオリジナルラストでわかる真意

2017年6月17日 17:45

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スマートフォンを見て全身を震わせる深瀬(藤原竜也)。感情の起伏が激しいラストだからこそ、彼の演技がさらに際立っているように思えた(c)TBS

スマートフォンを見て全身を震わせる深瀬(藤原竜也)。感情の起伏が激しいラストだからこそ、彼の演技がさらに際立っているように思えた(c)TBS[写真拡大]

■ドラマ『リバース』の最終回でオリジナルストーリーが展開
 6月16日にドラマ『リバース』の最終回が放映された。原作の内容は概ね9話までで放送され、最終回は湊かなえが描く完全オリジナルのストーリーで展開されることになった。原作の「イヤミス」な内容とは打って変わり、それぞれの登場人物がリスタートを切る清々しいサスペンス物だった。

【前回は】『リバース』9話で1話の伏線を見事回収、最終回はドラマオリジナル展開

■自分の過ちに気付き自暴自棄になる深瀬
 第9話のラストにて、美穂子(戸田恵梨香)の証言によって自分も広沢(小池徹平)の事故に係わっていたと知る深瀬(藤原竜也)。その日から深瀬は家に閉じこもり、美穂子はおろか浅見(玉森裕太)、谷原(市原隼人)、村井(三浦貴大)からの連絡にも応じなかった。

 広沢の件について詳細を追っていた小笠原(武田鉄矢)が深瀬の部屋を訪れると、無理にお酒を飲んで倒れていた。深瀬は小笠原の手によって窮地を脱し、さらに美穂子から広沢に関するエピソードを聞くことで、再び前を向く力を取り戻す。さらに、スマートフォンの電源を入れると浅見、谷原、村井から励ましのメッセージが何通も送られてきていた。

■過去を隠さず、ケリ付けると決意した4人
 浅見、谷原、村井の元に顔を出した深瀬は、広沢の両親である昌子(片平なぎさ)と忠司(志賀廣太郎)に真実を伝えようと提案する。悩んだ末に3人も了承し、空港から広沢の両親が住む愛媛へと飛び立とうとする。しかし、その直前に小笠原から連絡が入り、空港で事件の真実を告げられることになる。小笠原が調査した結果、広沢を殺したのは窃盗犯で、深瀬たち4人ではないと告げる。それでも深瀬たちは、自分たちが隠し続けた過去に決着を付けるために愛媛に向かう。

 愛媛で昌子と忠司に対峙した4人は、包み隠さず10年前の事故について話していく。しかし、昌子は4人のことを許すことができず、対話を拒んでその場から去ってしまった。言いよどむ4人を連れて忠司は外に出、「息子がどう生きてきたか教えて欲しい」と話した。4人は忠司の前で目一杯広沢の思い出を語り、広沢の元を再び訪れると約束して愛媛の地を後にした。

■ドラマ『リバース』のタイトルには二重の意味が込められている
 『リバース』は主要人物4人が過去に犯した過ちを隠すことで、人生にしこりを感じながら生きる大人たちの物語であった。その隠した過去を辿り、それぞれが過ちに気付くのが原作の大まかなストーリだ。

 しかし、ドラマ版のラストでは4人が過去を清算し、新たなスタートを切った姿が映し出されている。生徒とわだかまりのあった浅見、市議会議員の父の背中を追うことを辞めた村井、会社で虚勢を張っていた谷原たちは、それぞれ広沢との過去に向き合うことで、新たなスタートを切ることができた。そして、職を失っていた深瀬も新しい仕事を見つけると共に、美穂子と新しい関係をスタートさせたことが想像できる気持ちのいいラストだ。

 「リバース」には「失敗・逆戻り」などの意味があるが、綴りが変わると「再生」という意味もある。湊かなえの作品はどれも「贖罪」というテーマがどこかに見え隠れものが多い。だが、今回のドラマ版ではサスペンスもさることながら、ヒューマンドラマとしての側面が非常に強かったように思われる。原作を読んでいる人も、こうした違いを意識してドラマ版を見ると新たな視点で見られる作品に仕上がっていた。(記事:藤田竜一・記事一覧を見る

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