【柔道】第32回全日本女子柔道選手権展望 78キロ超級代表の行方は?

2017年4月15日 15:48

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■全日本女子柔道選手権大会とは?


 正式名称は「皇后盃全日本女子柔道選手権大会」で、毎年4月の第3日曜日に横浜文化体育館で行われる無差別級女子日本一をきめる大会。

 17年からは審判員15名のうち、女性が12名、男性3名が登用される。日本人柔道家にとっては、五輪、世界選手権とともに3冠タイトルの1つで、78キロ超級の選手にとっては五輪、世界選手権の選考会も兼ねている大事な大会だ。

 これまでに第1回優勝者の八戸かおりら11人優勝しているが、全員オリンピックや世界選手権でメダルを獲得している。

 ※オリンピック優勝者は、塚田真希と阿武教子の2名。

●ルールはどうなる?


 全日本女子選手権は、罰則等その他については4月1日から適用となる国際柔道連盟試合審判規定にて行われる。しかし、スコアは「一本」、「技あり」、「有効」の3種類で、「技あり」2つによる「合せ技一本」も残り、昨年度までの試合審判規定となる。

 試合時間については前年までの6分から5分に短縮。技によるポイントがない場合は、ゴールデンスコア方式の延長戦が行われる。

■勝ち上がり予想


 ロンドン五輪開催年の12年以降、13年を除いて山部佳苗(ミキハウス)と田知本愛(ALSOK)が優勝を分け合っているが(13年優勝者は緒方亜香里)、今大会は少し様相が変わってきそうだ。

●Aブロック


 Aブロックには、前年優勝者でリオ五輪銅メダルの山部が入った。順当に行けば3回戦で78キロ級の高山莉加(三井住友海上)と当たる可能性が高いが、地力の差を考えると準々決勝までは勝ち進んでくるだろう。

 反対側の山には昨年3位の梅津志悠(三井住友海上)が入った(右膝の手術で欠場する冨田若春の代役)。順当に勝ち上がれば、3回戦で藤原恵美(大阪府警察)と準々決勝進出をかけて戦うことになる。

 山部は準決勝進出をかけて藤原-梅津の勝者と戦うこととなるが、牙城を崩すまでは至らず。山部が順当に準決勝まで上がってくるだろう。

●Bブロック


 Bブロックには、講道館杯、グランドスラム(GDS)・東京、グランドスラム(GDS)・パリで優勝している朝比奈沙羅(東海大学)が入った。朝比奈は初戦(2回戦)で井上愛美(JR九州)と対戦。この試合を突破すれば、準々決勝までは順当に勝ち上がってくるだろう。

 反対側の山には山本沙羅(ミキハウス)が入った。準々決勝まで勝ち上がってくれば選抜体重別初戦の再戦となる。選抜では一瞬の隙をついた大外巻込で技ありを奪い山本が勝利した。

 激戦が予想されるが、僅差で朝比奈が準決勝に進出する可能性が高い。

●Cブロック


 Cブロックには、前回準優勝の田知本愛(ALSOK)が入った。

 田知本は前回大会決勝で左膝を故障して以降治療に専念。講道館杯欠場後、2月のグランプリ(GP)・デュッセルドルフで約10カ月ぶりの実戦復帰。決勝でキンドゼルスカ(ウクライナ)に小外刈で合わせられ敗れたものの、2位に入り復活を印象づけた。

 準々決勝までの強敵は、3回戦で対戦する見込みとなる泉真生(山梨学院大学)。準々決勝では、前回5位の井坂希望(千葉県警察)と後藤美和(日光警備)の勝者と対戦する見込み。

 選抜体重別は再度左膝を故障して欠場。順当であれば準決勝まで勝ち上がってくると見られるが、左膝の回復具合次第では番狂わせが起こる可能性もある。

●Dブロック


 Dブロックには、前回3位のベテラン市橋寿々華(大阪府警察)が入った。ベテランと呼ばれる年齢に差し掛かってきているが、試合運びの上手さには定評があり、全日本では14年から3年連続3位と安定した成績を残している。

 2回戦では選抜体重別78キロ級2位の濵田尚里(自衛隊体育学校)と対戦。難敵だが、初戦を突破すれば比較的楽に準々決勝まで勝ち上がってくるだろう。

 反対側の山からは、緒方亜香里(了徳寺学園職)と稲盛奈見(三井住友海上)の勝者が準決勝をかけて市橋と戦う可能性が高い。緒方、稲森ともに国際大会で優勝経験のある実力者だが、市橋が上手さを見せて準決勝に進出すると見られる。

●準決勝、決勝展望


 予想される準決勝のカードは、山部-朝比奈と田知本-市橋。

 山部-朝比奈はGDS東京とGDSパリで対戦。東京では合わせ技、パリでは指導3による反則勝ちで朝比奈が勝っている。ただ、山部もリオ五輪後の試合では外国人選手との戦いでは負けておらず好調を維持してきた。

 山部はリオ五輪以降、日本人選手では朝比奈に2連敗、選抜では準決勝で素根に破れている。一方、朝比奈はGDSパリまでは優勝と結果を出してきたが、選抜では山本に一瞬の隙をつかれ初戦敗退。選抜体重別ではお互いに精彩を欠いた。

 お互いに選抜後の調整具合が気になるところだが、接戦となることが予想される。ここは、講道館杯、GDS東京・パリと3連続優勝してきた朝比奈を推したい。

 田知本-市橋は東海大学の同級生対決となる。両者はこれまで3年連続準決勝で対戦しており、いずれも田知本が勝っている。

 田知本にとっては相性がいい相手だが、故障した左膝の回復具合次第によっては市橋が悲願の決勝進出を果たす可能性もある。

 決勝は、朝比奈-市橋。東海大学の先輩後輩対決を予想する。

 この場合、朝比奈、市橋ともに初の決勝進出。若さの朝比奈と上手さの市橋という構図が成り立つが、昨年末から今年にかけてGDS東京・パリで2連続優勝しており、勢いのある朝比奈に分があると見られる。

■78キロ超級代表、2枠目選出の行方は?


 世界選手権の代表候補と見られる選手は以下の4名。

 山部佳苗(IJF世界ランク5位) リオ五輪銅、GDS東京3位、GDSパリ2位、選抜3位
 朝比奈沙羅(同14位) 講道館杯優勝、GDS東京優勝、GDSパリ優勝、選抜初戦敗退
 田知本愛(同18位) GPデュッセルドルフ2位
 素根輝(同25位) 講道館杯2位、GDS東京2位、GPデュッセルドルフ3位、選抜優勝

 4人のうち、全日本に出場できないのは素根。昨年9月の全日本ジュニア体重別選手権で優勝すると、講道館杯2位などと結果を残してきた。全日本出場も期待されたが、九州大会準決勝で県内のライバルだった児玉ひかる(三井住友海上)に敗戦。出場権は獲得できなかった。

 しかし、選抜体重別では山部との準決勝でGS11分近い激戦を戦い抜き体落で制すると、決勝は稲森との6分の激戦を同じく体落で制し、3試合合計21分47秒を戦い抜いた。

 全日本女子の増地克之監督も「若い選手は体力面で不利になることも多いが、3試合ともGSを制したのは評価に値する」と評価しており、全日本の結果次第では素根の選出も否定できない。

 田知本はデュッセルドルフで10カ月ぶりの復帰を果たしたものの、選抜体重別を欠場しており、よほど圧倒的な内容で勝ち上がらない限りは厳しいだろう。

 山部、朝比奈ともにリオ五輪後の国際大会で実績を残してきた。両者は、順当に行けば準決勝で対戦。いずれか勝ち上がった方が78キロ超級の世界選手権代表1枠目に選出されるものと見られる。

 2枠目については、派遣見送りとなった63キロ級とすでに2名選出されている78キロ級を除いた5階級からメダル獲得を期待できる選手が選出される。

 他階級の各種国際大会や選抜体重別での結果から考えると、48キロ級の渡名喜風南(帝京大学)と1枠目以外の3選手の比較になると見られる。甲乙つけがたいが、3選手とも講道館杯以降結果を残しており、2枠目の残り1名も78キロ超級の選手から選出される可能性が高い。(記事:夏目玲奈・記事一覧を見る

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