デリカフーズ Research Memo(4):グループ3社を2017年秋に経営統合、高付加価値商品の強化で収益拡大へ

2017年3月27日 15:19

印刷

記事提供元:フィスコ


*15:19JST デリカフーズ Research Memo(4):グループ3社を2017年秋に経営統合、高付加価値商品の強化で収益拡大へ
 

■第三次中期経営計画「Next Change 2020」

2. 新中期経営計画の基本戦略
2月9日付で発表されたデリカフーズ<3392>の第三次中期経営計画「Next Change 2020」では、新たな成長戦略を推進していくことで、更なる収益拡大を目指していく計画となっている。

前提となる経営環境の見通しとして、プラス要因は、健康志向の高まりによる青果物需要の増加、生活スタイルの変化等によるカット野菜、真空加熱野菜の需要増、食品事故による消費者の「食の安全・安心」に対する意識の高まり等がある。一方でマイナス要因は、海外での政治情勢変化に伴うマクロ経済環境の不透明感の高まり、2019年10月に予定されている消費税引き上げに伴う消費マインドの低下などを挙げている。また、経営課題として人手不足の慢性化による労務コストの上昇、天候不順による原料調達及び価格の不安定化、ドライバー不足に伴う物流コストの高騰等がある。

こうした点を踏まえた基本方針として、「経営基盤の改革」「成長基盤の構築」「研究開発部門の強化」に取り組んでいく方針だ。

(1) 経営基盤の改革
経営基盤の改革として、グループ機能の最適化による収益体質の強化を進めていく方針だ。具体的には現在、エリア別に分けている3つの子会社(東京デリカフーズ、名古屋デリカフーズ、大阪デリカフーズ)を2017年秋を目途に経営統合する。また、それに先立ち2017年夏に同社の社名をデリカフーズホールディングス株式会社に変更する予定となっている。

主要3社を経営統合することによって、広域営業を推進していくほか、仕入調達や受発注業務の一元化を進めていく。従来は、エリアごとに営業活動や仕入調達、受発注機能を行ってきた。ただ、顧客の中でも全国展開する外食企業の比率が年々上昇しており、こうした顧客に対しては営業活動を一本化したほうが戦略的な営業提案を行うことが可能となり、取引シェアの拡大につながるものと期待される。また、仕入調達についても個別で仕入れるよりもグループ全体で調達する方が、仕入条件面で有利になるほか、担当スタッフの削減も可能となり、収益力の強化につながるといったメリットもある。

また、人財の育成にも取り組んでいく。とりわけ、工場や営業現場等で若手社員を指導する中間層の人財育成に注力していく方針だ。そのほか、働き方改革や労働環境改革による能率向上及び従業員満足度の向上を図るなど、次世代への継承も含めた改革プロジェクトを推進していく。

(2) 成長基盤の構築
成長基盤の構築に向けて、物流事業の強化・拡大、商品力・顧客対応力の強化、事業拠点の拡大、調達力の強化などを進めていく。

a) 物流事業の強化・拡大
物流に関しては、自社物流の比率を全社で3割程度まで高めていくほか、他社商品の物流サービスに展開していくことも計画している。物流費のコスト削減や、物流委託先の経営破たんといったリスクのヘッジに加え、調達物流や幹線物流などを手掛けて青果物の流通インフラを今後の武器にしていくことが目的となっている。同社では2014年に物流子会社のエフエスロジスティックスを設立し、2015年より東京エリアで物流事業(FSセンターから顧客先への物流)を開始している。現在2割程度まで内製化率が上がっており、近々、目標である3割に達する見込みとなっている。

今後の予定としては名古屋で2017年4月から、大阪で2018年春から、神奈川でも2018年春までにそれぞれ営業所を開設し、物流事業を開始する。それぞれのエリアで3割程度まで自社物流に移行した段階で、東京、名古屋、大阪などの幹線便の運航も開始する。また、その次のステップとして、調達ルートの物流についても自社で担っていくほか、配送先が同じ他社商品の物流サービスも展開していく計画となっている。物流業界は現在、慢性的なドライバー不足で経営難となっている中小零細企業も多くあり、M&Aなどでこうした企業を吸収し、早期に事業規模を大きくしていく可能性もある。

b) 商品力・顧客対応力の強化
また、成長戦略として商品力及び顧客対応力の強化により事業領域の拡大と売上成長を推進していく。需要が拡大しているカット野菜や真空加熱野菜、個食対応商品など高付加価値商品を中心に、外食及び外食以外の分野への積極展開に取り組んでいく。顧客対応力の強化としては、同社が推進する「デポ※化」を関東圏から全国へと展開していくほか、顧客に対してメニューや食材・産地提案だけでなく、物流やCSR(社会貢献)支援等も含めた総合提案力を強化することで、顧客からの支持を高めて売上成長を目指していく考えだ。

※デポ…物流センターの受託業務のことで、顧客の青果物配送センターとしての機能を受託する仕組み


c) 事業拠点の拡大
中期経営計画期間内において、工場1ヶ所、物流センター2ヶ所の新設を予定しており、現在の国内14拠点体制を17拠点に拡大していく計画となっている。工場については、首都圏もしくは名古屋を検討しており、物流センターについては、大阪で1ヶ所(賃貸)、札幌もしくは中国エリアで1ヶ所を検討している。2018年3月期中に選定作業を終える予定となっている。

d) 調達力の強化
天候不順や自然災害が原因で、野菜の価格が高騰したり、野菜品質の低下によりカット野菜の生産効率が低下し、減益要因となるケースがここ最近続いているが、こうした課題を改善することを目的に調達力の強化を推進していく。

まずは、グループ各社の経営統合によって「商品統括本部」を新設し、調達量と価格の安定を目指していく。また、調達難の際のリスクヘッジを目的とした国内及び海外産地の開拓と育成を推進していく。海外調達比率は1割前後の水準となっており、日本でほとんど収獲されないフルーツ類や価格が安い野菜などが多いが、リスクヘッジ用の野菜(サニーレタス等)も増やしていく予定だ。ただ、国内での調達量も増えるため、海外調達比率の水準はほとんど変らない見通しとなっている。

また、農業への参入も計画している。自社で種苗、栽培、農業経営を行い、各種データを蓄積していくことで収穫量予測システムを構築していくことが狙いだ。天候の変化等によって収穫量の増減を予測できれば、事前にその対策を打つことが可能となる。ただ、予測システムの構築には時間が掛かるため、その効果は2020年以降の次期中期経営計画に顕在化するものと予想される。

(3) 研究開発部門の強化
同社の強みでもある研究開発については、引き続き強化していく方針だ。健康志向の高まりにより、野菜の機能性についての関心が高まるなかで、次世代に向けた「農・食・健康」を繋ぐ新規研究分野の開拓を推進していく。また、ビッグデータを活用した抗酸化研究の強化及び外部研究機関との連携も推進する。

なお、従来、こうした研究開発活動は子会社のデザイナーフーズで行ってきたが、2018年3月期に分析サービス部門を分離し、子会社のメディカル青果物研究所に移管する予定だ。デザイナーフーズは主にコンサルティング業務と大きなテーマの研究を行うことになる。

(4) 資本・財務戦略と経営目標値
2020年3月期までの財務戦略として、キャッシュフローの効率的配分(財務の健全性、成長投資、株主還元)と連結ベースでの資金管理を強化し、グループ内資金の効率化に取り組んでいく方針となっている。また、ROEを重要な経営指標として位置付け、最終年度の目標を8.0%に設定した。当期純利益の拡大と経営効率の改善に取り組むことで実現していく考えだ。

これら戦略を推進していくことで、中期経営計画の最終年度となる2020年3月期には、連結売上高で40,000百万円、連結経常利益で1,100百万円、連結純利益で680百万円を目指していくことになる。2017年3月期の見込み対比で見ると、連結売上高の年平均成長率は6.1%、連結経常利益は同25.2%となる。売上高については新規工場が予定どおり稼働すれば十分達成可能な水準であり、また、経常利益についても利益率で2.8%の水準と直近5期間の平均2.4%を若干上回る程度であり、前述した経営統合の効果や高付加価値商品の売上拡大によって達成可能な水準であると弊社では見ている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)《TN》

関連記事