グループとしてのヲタ斬りに挑む乃木坂の挑戦

2017年3月18日 17:07

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 さる3月16日。アイドルグループ乃木坂46が、17thシングルの特典映像としてDVDに収録されるメンバー全員の個人PVの予告編を公開した。この個人PVは、これまで17枚のシングルのうち、10枚で企画されたもので、特に初期の1~5thは、各メンバー全員の持ち味を前面に押し出し、ルックスのよさ、成長段階などを追えると好評な企画で、新進気鋭の若手監督を多数起用し、乃木坂の特徴である「クリエイターが食指を動かしたくなる素材」としての魅力を印象つけるものだった。15th、16thでは別の物だったため、今回は3作品ぶりのものとなる。

 Youtubeでの配信ということで再生回数も出るため、人気順位などもある程度反映されるのだが、白石麻衣や、西野七瀬といった人気メンバーのなかに、斉藤優里や伊藤万理華といった中堅メンバーも作品の出来を評価され、互角に戦っているのは、クオリティ重視の乃木坂らしい結果といえるだろう。

 しかしながら、今回、再生回数ではトップクラスのスタートダッシュを決めながら、低評価と中傷コメントで溢れてしまったのが、先日、週刊文春による熱愛報道を受けた川村真洋である。先日、当欄でも触れたように、事件の経過についての説明もなく、本人からの謝罪もないまま、SNSでの発言は再開されたため、ヲタが不快に感じているという意思表示が表れたといえるだろう。しかしながら、当初は野次馬も含めて、中傷、バッシング、揶揄などが溢れていたネット上では、カウンター的な声が大きくなりつつある。

 つまり、乃木坂にとって大切な個人PVの予告に、汚い言葉を書き散らすことが乃木坂にとってプラスになるのか? あるいは、文春の記事のあと、アンチによってつけられた尾ひれまで盲信するのはどうなのか? 謝罪しないのは、川村の意思だと決めつけていいのか? という、良識的な声が日ごとに大きくなってきているのだ。

 中には、「個人PVは謝罪動画を上げろ」という書き込みに対して「残酷ショーを見たいだけのレイシストはいらない」といった厳しい書き込みも見えた。さらに、今回の川村真洋の個人PVは、かつて冠番組で1フレーズだけ披露し、ファンの間では伝説にもなっている「SASUKE」という歌をソロで弾き語りをしているもので、川村最大の武器である歌唱力が存分に味わえる、クオリティーの高いものであることから、あらためて彼女の実力を認めるファンも増えてきており、弱かった握手会でも完売を出すなどの現象が起きている。

 活動6年目を迎え、1、2期生が成人を迎えかけている乃木坂にとって、ヲタ斬り(というより、アイドルは自分の思い通りになるべきだと増長するヲタを排除すること)は、喫緊の急務でもある。今回、人気メンバーの白石麻衣、松村沙友里を握手会メンバーから外し、その他のメンバーも芝居のスケジュールを優先した日程を組んでいるのもその一環だし、生田絵梨花の「舞台優先」のコメント、伊藤万理華の女性受けを狙ったファッション誌への露出なども、卒業後のメンバーの飛躍、あるいは現役メンバー、これから入ってくるメンバーに対してのメッセージだろう。

 実は、ヲタのおもちゃから、ファンをひきつけることができるアーティストへの転換ということを、秋元氏は過去に2回ほど挑戦している。それがAKB内の実力派を集めた「DIVA」であり、あるいは「SDN」であったのだが、二つとも性急過ぎたのか、消化不良で終わってしまっている。乃木坂は、その辺を考慮して、上手くソフトランディングできるように、時間をかけているわけだが、果たして初の成功例になるかどうか、注目したいところだ。

注:ここでいうアーティストとは、歌手という意味だけではない。デザイナーや女優といった、プロフェッショナル全般の意味である。(記事:潜水亭沈没・記事一覧を見る

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