蚊の嗅覚器機能を応用した「汗のにおいセンサー」、人命救助の用途

2016年10月24日 07:56

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記事提供元:エコノミックニュース

 東京大学生産技術研究所の竹内昌治教授らは、神奈川科学技術アカデミーや住友化学などと共同で蚊の嗅覚器機能の応用した小型センサーを開発した。同センサーでは、蚊の嗅覚器に存在するヒトの汗のにおい成分(オクテノール)を検出するたんぱく質を大量に作製。人工の細胞膜に組み込むことでセンサー化している。膜の導電率の変化によって汗のにおいの有無を判断する。同センサーをロボットに搭載するなどの方法で、災害現場での不明者探索用途に活用することを目指す。今後は、最長1時間程度のセンサーの寿命を半日程度まで伸ばし、においの有無のみでなく方向も検知することで実用化を目指すとのこと。

 日本では生物の構造を模倣した技術を、これまで多く輩出してきた。慶應義塾大学先端生命科学研究所発のベンチャー、スパイバーではクモの糸のDNAと同じ配列を人工的に作り出し、微生物を活用した大量生産を可能にしている。クモの糸は強度・弾力性が高くタンパク質でできているため環境にもやさしい素材。自動車用部品や衣類、医療分野での活用が期待されている。また、日東電工ではヤモリの足の構造を忠実に真似ることで、粘着剤を使用せずに強力な粘着力を保持するヤモリテープを開発している。最近では京都大学の研究グループが酵素を模倣した触媒反応によって、自律的に分子の形を識別し無数の化学反応のなかから最適経路を見つける手法を開発。従来困難だった複雑な構造をもつ原料分子からの優れた半導体特性を備えた炭素ナノリボン生成に成功している。

 コンピュータの解析技術が格段に上がったことにより、近年バイオテクノロジーやナノテクノロジーは新しいステージに入ったといえる。現在も生物の構造を模倣した画期的な技術の研究・開発は進められており、ベアリングの技術に砂漠をうまく歩行するトカゲの構造を応用したり、赤外線センサー技術に数十キロ離れた火山活動を認識するタマムシの構造を模倣したりといった研究もある。何億年かけて培ってきた生物の構造に学ぶことで、技術的ブレークスルーにつなげる動きは今後も加速すると考えられる。(編集担当:久保田雄城)

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