【食品スーパー業界の3~8月期決算】事業再編も自然災害も乗り越える元気な業態

2016年10月19日 21:04

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記事提供元:エコノミックニュース

■食品スーパー全店売上高は昨年4月以来プラスが続く

 食品スーパー業界主要各社の2016年3~8月期(第2四半期/中間期)決算がほぼ出揃った。

 小売業を業態別におおまかに色分けすると、百貨店、GMS(大型量販店)は「元気のない業態」、専門店、コンビニ、食品スーパーは「元気がある業態」。百貨店は昨年までは訪日外国人のインバウンド消費でそれなりに業績が良かったが、今年に入ってから元気がなくなっている。

 大手流通グループのセブン&アイHD<3382>とイオン<8267>の3~8月期決算を見ても、セブン&アイHDの百貨店事業は18億円、イトーヨーカ堂単体は34億円の営業赤字で、イオンのGMS事業も183億円の営業赤字だった。百貨店とGMSの業績が沈没する一方で、セブン&アイHDはコンビニ事業への依存体質がますます強まり、イオンは食品スーパーやドラッグストアや金融事業がGMSの赤字を埋めるという利益構造になっている。

 業界団体の月別売上高統計でも、コンビニと食品スーパーは相対的に元気がいい。2015年10月から2016年8月まで11カ月間のデータでは、全国百貨店売上高(全店)は対前年比でマイナスだった月が8回もあり、GMSを含む全国スーパー売上高(既存店)は6回だったが、全国コンビニエンスストア売上高(既存店)と食品スーパー売上高(既存店)は2回しかなかった。日本スーパーマーケット協会など食品スーパーの3業界団体が加盟270社のデータを集計した「スーパーマーケット販売統計調査(食品スーパー売上高/速報)」によると、全店ベースの売上高は昨年4月以来17カ月間プラスが続いている。地域密着型の中・小型の食品スーパーチェーンは、おおむね業績好調だ。

■中間期の業績は増収が揃い、最終利益の2ケタ増益も目立つ

 大都市圏、特に首都圏に店舗網を持つ大手食品スーパーの業績良好という傾向は、この3~8月期も変わりなかった。

 昨年3月1日にマルエツ、カスミ、マックスバリュ関東が経営統合して発足したイオン系のユナイテッドスーパーHD<3222>は、営業収益3.7%増、営業利益2.7%減、四半期純利益22.0%増の増収、最終2ケタ増益。四半期純利益の通期見通しに対する進捗率は71.0%と高い。中間配当は前年同期と同じ7円。6~8月期にマルエツ8店舗、カスミ7店舗を新規出店。マックスバリュ関東は10店舗を改装した。6月にその3社の共同販促企画を実施して客数増につながった。生鮮食品や総菜が伸びている。

 埼玉県中心に店舗展開するベルク<9974>は営業収益7.6%増、営業利益12.3%増、四半期純利益22.9%増の2ケタ増益。四半期純利益の通期見通しに対する進捗率は55.5%。中間配当は前年同期から5円増配して28円。セルフレジを導入するなど、食品スーパー業界で最先端をゆく店舗の効率化で高い利益率を維持している。それを基盤に、全体的には低価格を維持しながら高級輸入食材やワインの品揃えを強化するなど、複雑な首都圏の消費市場にしなやかに対応している。

 東武ストア<8274>は売上高0.4%減、営業利益10.4%増で3~5月期の減益から増益に転じた。四半期純利益は21.0%の大幅減益だが、店舗の減損損失3億5400万円を特別損失に計上したため。四半期純利益の通期見通しに対する進捗率は30.2%。中間配当は前年同期と同じ2.5円。天候不順、競合との競争激化、中規模店舗の閉鎖、改装休業などの影響で減収でも、経費削減の効果が出て2ケタ営業増益になった。9月1日に10株を1株とする株式併合を実施した。

 関西が本拠だが首都圏の店舗も多いライフコーポレーション<8194>は、今期から連結決算に移行したため前年同期との比較はできず、営業収益は3236億円、営業利益は60億円、四半期純利益は37億円。当初の業績見込みと比べて営業収益は17億円低いが、営業利益、四半期純利益は6億円高く、おおむね計画通り。通期見通しに対する進捗率は、営業収益は49.0%、営業利益は47.4%、四半期純利益は50.6%。中間配当は前年同期よりも2.5円増配して15円だった。3~8月期の既存店売上高は1%増で、加工食品が伸びた。横ばいの客単価を客数増でカバー。5店舗を新規出店し4店舗を改装した。光熱費などコスト削減の効果もあがっている。

 近畿圏中心のオークワ<8217>は営業収益は0.9%減、営業利益15.2%減、四半期純利益35.7%増の33.4%減の減収減益決算。既存店売上高は前年割れだが3~5月期と比べて営業減益幅が圧縮し、最終利益は大幅減益から大幅増益に一転した。四半期純利益の通期見通しに対する進捗率は13.9%から67.0%に大幅改善。中間配当は前年同期と同じ13円だった。最終利益改善の要因は、仕入先の食品メーカーなどの持ちあい株を売却して4億円の投資有価証券売却益を特別利益に計上したため。

 第2四半期(中間期)、大都市圏以外の地方の食品スーパーはM&Aや、属している流通グループの店舗再編の効果、あるいは地元の人たちの気分を明るくするプロ野球球団の優勝効果などで売上を伸ばす企業が多く、健闘している。

 マックスバリュ北海道<7465>は営業収益20.5%増、営業損益は3~5月期の赤字から黒字に転換し前年同期比43.4%減、四半期純損益は2億2400万円の赤字だった。前期に加わったダイエーやスーパーいちまるの21店舗や、札幌が本拠なので「ファイターズ優勝効果」も寄与して増収に貢献しても、事業承継によりダイエー店舗の赤字を受け継ぐ形でコスト負担も加わった。固定資産の減損処理で2億7200万円を特別損失に計上したが、最終利益の赤字拡大は3~5月期比で約1400万円にとどめている。中間期の配当は前年同期と同じで無配。

 中国・四国地方の天満屋ストア<9846>は営業収益1.5%増、営業利益7.6%増、四半期純利益9.7%増の増収増益で、四半期純利益の通期見通しに対する進捗率は46.3%。中間配当は前年同期と同じ2.5円。3月の天満屋ハピーマートの吸収合併をもって構造改革は前期で一段落し、あとは経営努力の効果の収穫期になる。

 西日本一帯に「イズミ」「ゆめマート」などを展開するイズミ<8273>は、営業収益10.9%増、営業利益16.9%増の2ケタ増収増益。既存店売上高は2%増。熊本地震で休業した店舗も子会社の1店舗を除いて営業を再開し、GMSも食品スーパーも、食料品も衣料も日用品もおしなべて販売好調で客単価が上がった。北九州市のスーパー大栄、広島県のユアーズの買収効果に加え、広島が本拠なので「カープ優勝効果」も。しかし四半期純利益は66.9%減で通期見通しに対する進捗率は22.6%どまり。熊本地震による店舗の被災などで3~8月期に「災害による損失」の特別損失を123億円計上しため、大幅な最終減益となった。中間配当は前年同期比2円増配で33円だった。

 イズミと同じく広島が本拠のマックスバリュ西日本<8287>も「カープ優勝効果」が出ているのか営業収益1.2%増、営業利益24.7%増、四半期純利益141.6%増(約2.4倍)で、四半期純利益の通期見通しに対する進捗率は61.1%と多い。中間配当は前年同期と同じで無配。新規出店や既存店の改装、総菜の品揃え充実が客数増につながった。

 マックスバリュ九州<3171>は売上高12.4%増、営業利益56.0%増、四半期純利益38.8%増の2ケタ増収増益。中間配当は前年同期と同じ無配だった。売上高は九州のダイエー14店舗を継承した効果が出ている。熊本地震による被害は軽微だったが、店舗改装を下半期に先送りした分、コストが抑えられている。

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