東京大学などの研究グループ、猫が腎不全になりやすい原因を発見

2016年10月15日 20:10

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記事提供元:スラド

あるAnonymous Coward 曰く、 猫の死因トップは腎不全とされているが、その原因や治療法については分かっていなかったという。東京大学の宮崎徹教授らの研究グループは、人やマウスが急性腎不全になった際に腎機能を改善させる「AIM」というタンパク質が猫では働かないことを発見。このタンパク質の働きを利用した薬の開発が進められているという。これにより、猫の寿命を大幅に伸ばせる可能性があるそうだ(毎日新聞の記事)。

 AIM (Apoptosis Inhibitor of Macrophage)は、宮崎教授が発見したマクロファージから分泌される分子。当初は細胞死(apoptosis)を抑制する分子と考えられていたが、その後の研究で細胞の種類などによりさまざまな作用をもたらすことが判明している。宮崎教授らの研究グループは今年1月、AIMがヒトとマウスで急性腎不全治癒に重要な役割を果たすという研究成果を発表している(プレスリリース)。

ヒトやマウスのAIMは腎機能低下時に血液中から尿中に移行し、尿細管に詰まった細胞の死骸に付着する。周囲の細胞はAIMを目印として細胞の死骸を一斉に掃除するため、腎機能は速やかに回復する。今回の研究成果では、ネコのAIMが腎機能低下時に活性化せず、尿中に移行しないことが判明したという(プレスリリース)。

そのため、ネコの場合は血液中に十分なAIMがあっても腎機能回復には作用せず、慢性腎不全に移行する可能性が高いとのこと。さらに、AIMをネコ型に変えたマウスを使用した実験で、急性腎障害を起こした際にマウスのAIMを静脈注射することで致死率が著しく低下することも判明している。今回の研究成果はネコの腎不全の治療・予防法確立に大きな進展をもたらすと同時に、ヒトの患者に対してもAIMによる治療や予防の現実性をさらに高めるものとのことだ。

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