ファクトリー体制を継続し、新たにロッシの若手育成システムを導入するヤマハ

2016年3月8日 21:08

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記事提供元:エコノミックニュース

ファクトリーレーシングの選手と監督たち。中央は木村隆昭副社長

ファクトリーレーシングの選手と監督たち。中央は木村隆昭副社長[写真拡大]

 3月1日にヤマハ発動機<7272>が、2016年度における国内外のレース体制を発表した。MotoGPでは、昨年優勝し、自身5回ものチャンピオンを獲得中のホルヘ・ロレンソ選手と、9回ものチャンピオンに輝き、ランキング2位であったバレンティーノ・ロッシ選手が今年も引き続きヤマハのファクトリーチーム「Movistar Yamaha MotoGP」から参戦する。また、ヤマハが5年ぶりにスーパーバイク世界選手権に復帰することもトピックだ。

 「MotoGPのレギューレションが大きく変わります。ます、タイヤブランドの変更です。それにエンジン制御が主催者側の用意した統一のソフトフェアになりました。正直まだ手探りの状況で、タイヤをまだ理解しきれていませんし、ライダーも乗り方自体を変えなくてはいけないのかと。開幕戦であるカタールまで最終調整を行っていきます」と、技術本部MS開発部の辻幸一部長。制御(ECU)に統一のソフトウェアを用いるとなると、マシン本来が持っている戦闘力の差が縮まり、より白熱したバトルになることが予想できる。

■国内レースもファクトリー体制で挑みさらに強固に

 国内レースにはおいても昨年同様にファクトリー体制で挑む。まず、全日本ローレース選手権(JSB1000)では、中須賀克行選手の5連覇が期待されている。また、全日本モトクロス選手権では、昨年は怪我により出場を逃した平田優選手に加え、6位の三原拓也選手の布陣で2011年以来のチャンピオン獲得を目指す。さらに、全日本トライアル選手権では、通算11回ものチャンピオンを獲得しているものの、ここ数年は2位のポジションで苦渋を味わっていた黒山健一選手が、12回目のチャンピオンを狙う。

 ヤマハではライダー育成も目標に掲げて力を注いでいる。アジアから世界を目指すライダーの登竜門として、昨年はアジアロードレース世界選手権に新設のAP250クラスに参戦、多くの若手ライダーのチャンスを広げてきた。さらに今年はトップクラスのSS600にヤマハとしてYZF-R6で参戦することが決まっている。「トップカテゴリーの好成績と相まって、ASEAN地域におけるYZF-R25、R3の市場投入の原動力にも繋がっている」と、ヤマハの木村副社長は語るなど、二輪ビジネスの最重要市場であるアジア地域での活動を本格的にスタートさせている。

 昨年、ヤマハはMotoGPでは三冠を達成し、モトクロス世界選手権でも6年ぶりのチャンピオンを獲得。さらにMotoGPマシンの技術をフィードバックして開発した新YZF-R1を市場に投入し、鈴鹿8時間耐久ロードレースでは19年ぶりの優勝を飾るなど、まさに創立60周年にふさわしい年であった。

 ヤマハがレース活動において掲げるスローガンは「ヤマハブランドの価値を高めるブランディング」「レース活動から得た技術を市販車へフィードバック」「レースをする喜び、見る喜びを世界中に普及」の3つで、昨年はそれらを具現化した年だと言っていいだろう。

■ヤマハがロッシ主宰の若手ライダー育成システムを導入

 レース体制の発表の他に、バレンティーノ・ロッシ選手が主宰する「VR46 Riders Academy」とヤマハが、3年間のオフィシャル・パートナーおよび、モーターサイクルのオフィシャル・サプライヤー契約に合意したと発表した。「VR46 Riders Academy」とは、イタリア人の若手ライダーの活動をサポートするために2014年に開設した組織で、現在までにMotoGPのMoto2、Moto3で活躍するライダーを輩出してきた実績がある。ヤマハはYZF-Rシリーズ、YZシリーズ合計26台を提供するほか、将来ファクトリーライダーに成長するためのさまざまなノウハウを提供していく。

 2016年は、アジアロードレース選手権のアジア・プロダクション250、およびその他の選手権に出場している若手ライダーから選抜し、全2回、各1週間のトレーニングプログラムを、アカデミーの本拠地であるVR46モーター・ランチや、ミサノ・サーキットで行う。指導はなんとロッシ選手やアカデミーのスタッフがあたる。

 ヤマハはMotoGPやJSB1000、鈴鹿8時間耐久ロードレースでの連覇を狙い、スーパーバイク世界選手権には5年ぶりに復帰する。さらにアジア選手の育成や市場の開拓など、2016年もレースでの感動を届け、魅力ある製品作りをしてくれるだろう。チャレンジスピリットを企業文化の一つとして掲げているヤマハに注目したい。(編集担当:鈴木博之)

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