【百貨店、専門店業界の3~11月期決算】インバウンド消費いまだ好調な百貨店。業績の明暗が分かれる専門店

2016年1月17日 15:33

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記事提供元:エコノミックニュース

小売業の百貨店、専門店業界の主要各社の3~11月期(第3四半期)決算が出揃った。写真は、東京都中央区の高島屋日本橋店。

小売業の百貨店、専門店業界の主要各社の3~11月期(第3四半期)決算が出揃った。写真は、東京都中央区の高島屋日本橋店。[写真拡大]

■百貨店好調、無印良品絶好調、ユニクロ不調


 小売業の百貨店、専門店業界の主要各社の3~11月期(第3四半期)決算が出揃った。

 百貨店は訪日外国人観光客の「インバウンド消費」が依然、衰えを見せず、その恩恵を受けている。高島屋<8233>が営業収益2.1%増、営業利益19.3%増、純利益24.7%増の2ケタ増収。大丸、松坂屋のJフロントリテイリング<3086>が売上高2.5%増、営業利益22.0%増、純利益79.6%増で最終利益大幅増。セブン&アイHD<3382>傘下のそごう・西武は営業収益0.1%減、営業利益0.2%減。決算期はずれるが三越伊勢丹HD<3099>の4~9月期決算は利益項目が大幅に上振れし、売上高は5.5%増、営業利益は48.6%増、純利益78.1%増だった。阪急百貨店と阪神百貨店のH2Oリテイリング<8242>の4~9月期決算は営業利益が大きく上振れし、売上高26.7%増、営業利益29.1%増、純利益50.0%減だった。

 専門店は「ユニクロ」のファーストリテイリング<9983>の9~11月期決算は売上収益8.5%増、営業利益16.9%減、最終当期利益30.2%減という2ケタ減益。2ケタ増収増益だった前期との落差が大きくショッキングな内容だった。「無印良品」の良品計画<7453>の3~11月期決算は、営業収益は19.0%増、営業利益は45.2%増、純利益は37.4%増で2ケタ増収増益。

 カジュアル衣料のしまむら<8227>は売上高6.6%増、営業利益3.4%増、純利益2.8%増の増収増益。靴のABCマート<2670>はインバウンド消費が依然好調で、売上高12.3%増、営業利益2.3%増、純利益5.1%増と増収増益を維持している。家具のニトリHD<9843>は売上高7.8%増、営業利益4.2%増、純利益は10.1%増と最終2ケタ増益。ホームセンターのDCMHD<3050>は営業収益0.5%増、営業利益8.4%増、純利益6.7%増。外食の吉野家HD<9861>は売上高4.4%増、営業利益40.3%減、純利益61.4%減で増収、大幅減益だった。

■決算期末2月の春節商戦の行方はいかに?


 百貨店、専門店業界の2016年2月期の通期見通しは、百貨店のJフロントリテイリング、そごう・西武と、中間期で上方修正した三越伊勢丹HD、H2Oリテイリングは2ケタ営業増益を見込んでいる。専門店は「無印良品」の良品計画は絶好調で上方修正したが、「ユニクロ」のファーストリテイリングは下方修正した。

 百貨店の高島屋は営業収益2.2%増、営業利益6.2%増、当期純利益5.0%増で修正なし。インバウンド消費の勢いそのままに連続増収増益を目指す。Jフロントリテイリングは売上高2.7%増、営業利益11.5%増、当期純利益27.7%増の2ケタ増益で修正なし。そごう・西武も連続増収増益で営業収益2.8%増、営業利益17.3%増を見込んでいる。三越伊勢丹HDの3月期通期見通しは昨年11月9日に上方修正し、売上高は100億円上積みして前期比3.0%増、営業利益は20億円上積みして11.8%増、当期純利益は20億円上積みして9.7%減の見込み。H2Oリテイリングの3月期通期見通しは昨年10月29日に上方修正。売上高は171億円上積みして8.6%増、営業利益は16億円上積みして15.2%増、当期純利益は10億円上積みして20.8%増の見込み。

 大手百貨店の12月の年末商戦はH2Oリテイリング以外は前年比増収だった。しかし2月期決算期末の2月7~13日に中国の春節(旧正月)休暇があり、春節商戦の結果次第で通期の業績が動く可能性がある。人民元安がインバウンド消費にどれぐらい影響するか、予断を許さない。

■厳しい寒波が来れば衣料品専門店は好転?


 専門店チェーンの通期見通しは明暗が分かれる。ファーストリテイリングは2016年8月期通期見通しを下方修正し、営業収益は1000億円減で7.0%増、営業利益は200億円減で9.4%増、最終当期利益は50億円減で前期とほぼ同額とした。下方修正の主な理由は12月までの暖冬の影響という。逆に良品計画は2016年2月期見通しを上方修正。営業収益は112億円上積みして18.0%増、営業利益は10億円上積みして38.4%増、当期純利益は14億円上積みして29.3%増。営業利益は連続2ケタ増益で4期連続最高益の見通しと、絶好調だ。

 しまむらも通期業績見通しを修正し、売上高は40億円上積みして7.1%増、営業利益は55億円減で10.0%増、当期純利益は39億円減で10.1%増と、利益を下方修正しても2ケタ増益見通しを維持している。ABCマートは3~8月期決算の発表時に通期の業績見通しを修正しており、今回は売上高10.9%増、営業利益2.8%増、当期純利益4.1%増で据え置き。ニトリHDの通期見通しは売上高6.6%増、営業利益7.1%増、当期純利益5.2%増で修正なし。29期連続の増収増益を目指す。DCMHDは営業収益3.6%増、営業利益8.3%増、当期純利益13.2%増で、前期の減収減益、最終2ケタ減益からのV字回復を見込んでいる。吉野家HDの通期見通しは売上高2.8%増、営業利益14.7%減、当期純利益は6.3%増で修正なし。

 だが1、2月に厳しい寒波が来れば、ユニクロの「ヒートテック」や「ウルトラライトダウン」、ABCマートのロングブーツ、吉野家の「牛すき鍋膳」など、利幅の大きい冬物商品が売れて業績が好転する可能性がある。(編集担当:寺尾淳)

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