アルマ望遠鏡で遠方銀河の活発な星形成を明らかに―東大・ジョン・シルバーマン氏ら

2015年10月21日 22:22

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衝突し、爆発的に星形成が起きている銀河の例 Zw II 96。今回アルマ望遠鏡ではこの天体よりもずっと遠方で活発に星を作っている銀河を観測した。©NASA, ESA, the Hubble Heritage Team (STScI/AURA)-ESA/Hubble Collaboration and A. Evans (University of Virginia,Charlottesville/NRAO/Stony Brook University)

衝突し、爆発的に星形成が起きている銀河の例 Zw II 96。今回アルマ望遠鏡ではこの天体よりもずっと遠方で活発に星を作っている銀河を観測した。©NASA, ESA, the Hubble Heritage Team (STScI/AURA)-ESA/Hubble Collaboration and A. Evans (University of Virginia,Charlottesville/NRAO/Stony Brook University) [写真拡大]

 東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構のJohn D. Silverman(ジョン・シルバーマン)特任助教らの研究グループは、遠くの宇宙にある7つのスターバースト銀河を観測し、遠方のスターバースト銀河の環境が、激しい星形成が起きている近くのスターバースト銀河と似ていることを明らかにした。この結果から、昔の宇宙でも現在と同じような環境下で爆発的な星の形成が起きていた可能性が示されたという。

 銀河では、スターバーストと呼ばれる爆発的に星が作られる現象が起きることがある。こうした爆発的な星の形成が起きている銀河のことをスターバースト銀河と呼び、銀河の進化に重要な役割を果たしていると考えられている。

 今回の研究では、南米チリのアタカマ高地にあるアルマ望遠鏡とフランスのビュール高原にあるビュール高原電波干渉計 (PdBI) の二つの電波望遠鏡を用いて、星形成の盛んな遠くにある7つの銀河が放つ一酸化炭素分子ガスの電波を観測した。

 観測した7つの銀河はCOSMOSフィールドと呼ばれる天域において赤外線宇宙望遠鏡ハーシェルが行った観測で見つけられた星形成の盛んな銀河で、その一部は、ハワイのすばる望遠鏡に搭載されたファイバー多天体分光器FMOSを用いて2014年に近赤外領域での観測も行っている。

 観測結果の解析から、今回観測した遠方のスターバースト銀河では、一酸化炭素分子ガスの量はすでに減少していたものの高い星形成率を保っており、期待されるほど早いガス量の減少はないものの、近くのスターバーストと似た状況を示していることが分かった。

 ジョン・シルバーマン特任助教は、「これらの観測は、高赤方偏移銀河の重要な性質を容易に観測できるアルマ望遠鏡の持つ特殊な能力を明確に示すもので、今回の成果はアルマ望遠鏡によりもたらされた注目すべき結果です」とコメントしている。

 今後、アルマ望遠鏡を用いた電波による観測とFMOSを用いた近赤外線による観測の両面から、遠方のスターバースト銀河をさらに調べることで、過去の宇宙でどのような環境下で爆発的な星形成が起きていたのかをより詳細に明らかにし、過去から現在に至るまでの銀河の進化に迫ることが期待される。

 なお、この内容は「The Astrophysical Journal」に掲載された。論文タイトルは、「A higher efficiency of converting gas to stars pushes galaxies at z~1.6 well-above the star-forming main sequence」。

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