明豊ファシリ Research Memo(3):CM事業が最も成長ポテンシャルが高い事業

2015年7月4日 18:32

印刷

記事提供元:フィスコ


*18:32JST 明豊ファシリ Research Memo(3):CM事業が最も成長ポテンシャルが高い事業
 

■事業概要

(4)事業内容

現在の事業セグメントはコンストラクション・マネジメントサービスの提供目的によって、「オフィス事業」「CM事業」「CREM事業」の3つに区分されている。

オフィス事業はオフィスの移転・新築・改修を計画している企業に対して、計画の初期段階から移転先の選定や設計、設備調達、工事、引越しまでをワンストップサービスで提供する事業となる。受注契約としては多工種にまたがるため、一括請負型の「アットリスクCM方式」の利便性が評価された結果として、同方式が採用されるケースがある。

CM事業は、明豊ファシリティワークス<1717>の中で最も成長ポテンシャルの高い事業となる。建物の新築・改修・改築や空調・電気設備の更新などに関して、施主の要望を整理して基本計画を作成し、プロジェクトの早期立ち上げを支援する。その後、施主に代わって設計・発注・施工等各工程における品質管理、コスト管理などを行い、工事費用やスケジュール管理が適正に行われるようマネジメントする事業となる。受注契約方式は総工事費が大きくなるため、「ピュアCM方式」での契約が多い。

コーポレート・リアル・エステート・マネジメント(以下、CREM)事業では、金融機関や大企業を中心に保有資産の最適化をサポートするサービスを行っている。具体的には、多拠点施設の新築・改修において、同社のCM手法を用いて工事コストの削減を図るほか、顧客保有資産のデータベース化による資産情報の集中管理を行うことによって、複数年にわたる改修プロジェクトにおいて、工期の短縮化や予算執行の平準化を実現するサービスとなる。このため、同事業は複数年契約となるケースが多く、ストック型のビジネスモデルに近いと言える。顧客は大企業が多くを占め、かつ複数年にまたがるプロジェクトが多いことから、CREM事業を通じて新規の建設プロジェクト案件などの情報も得られるようになってきており、CM事業への橋渡し的な位置づけにもなってきている。

そのほか同事業では、既存施設の耐震診断や環境・省エネ問題に対応するライフサイクルマネジメント※に関するサービスなども行っている。拡大する環境・省エネニーズに対応すべく、同社ではCASBEE建築評価員資格取得保有者も拡充しており、2015年5月末時点で24名が在籍している。
※ライフサイクルマネジメント:建築物のライフサイクルにわたって建築物の各役割における効果が維持の向上、並びに費用の削減を総合的に行うとともに、生涯の二酸化炭素の削減も考慮し、最適な案を選択していく営み。

(5) SWOT分析

同社の経営を取り巻く外部環境と経営の現状とについて、SWOT分析で簡便表にて表した。なお、SWOT分析とは、強み「Strength」、弱み「Weakness」、機会「Opportunity」、脅威「Threat」の4つに区分して、組織のビジョンや戦略を企画立案する際に利用する、経営分析の一般的な手法である。

外部環境面での成長機会としては、対建設投資において品質、コストとスピードへの顧客側の意識が高まること、また、企業モラルやコンプライアンス意識の高まりによって、発注プロセスやコストを明確に開示し、建設費用の削減に資するCM事業者へ発注するケースが増えていくことが想定される。ただしCM事業者にとっては、設計から工事入札、施工管理まで高度かつ全体を網羅する専門能力に加えて、発注者と工事業者との利害調整能力も必要となる。また、一般的なCM事業者は設計工程が完了した段階でプロジェクトに参画するケースが多いが、同社はさらに上流工程となる建設の基本構想段階から参画するケースが全体の7割以上を占めるようになってきており、これがCM事業者の中における強みの1つとなっている。

一方、外部環境面でのリスク要因としては、既存建設業者との競争激化や建設投資循環の影響が挙げられる。ただ、CM手法の採用割合はまだ低く、今後は地方自治体など公共分野での普及拡大も見込まれており、影響は限定的と考えられる。また、足元における建設投資は震災復興需要や東京オリンピック需要などもあり、当面は旺盛な需要が続くと想定される。

内部環境における「強み」としては、独立系であり「フェアネス」と「透明性」において、既存顧客から高い信頼を獲得し、それが今では企業風土として新規顧客の開拓においてもプラスになっている点が挙げられる。また、同社は情報の可視化等を目的に開発したプロジェクト予算管理システムを使って、受注プロジェクトごとのコスト管理を従業員一人ひとりのマンアワーコストで管理しており、生産性向上に対する意識が会社全体で高いことも強みと言える。ワークスタイル面でも、早くから社内のフリーアドレス化、ペーパーレス化を実現している。建築業界においては、顧客との折衝において建築図面など関係書類が膨大となるが、同社ではこうした対外折衝においても、すべてペーパーレスで行っており、生産性向上に寄与している。

一方、内部的な「弱み」としては、専門能力の高い人材がプロジェクト数に比例して必要となるために、成長拡大を持続していくためには、優秀な人材の継続的な確保が必要となってくることが挙げられる。ここ数年で業界の中での同社のブランド力、知名度は格段に上昇しており、大手企業や設計事務所などからも優秀な人材が集まるようになっており、年間10名強程度のペースで従業員数も拡大してきている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)《YF》

関連記事