トヨタ、国内販売の半数が高効率なハイブリッド車。その技術基盤を支えるSiC半導体

2015年4月25日 20:52

印刷

記事提供元:エコノミックニュース

トヨタが推し進めてきたTNGAを導入したモデルの車台を発表。「TNGAの取り組み状況」とするリリースで、“バッテリー性能の向上”や“ハイブリッド性能を15%向上させた”「2015年発売予定のFF系ミディアム車」という表現で伝えたモデルだ。秋登場の新型プリウスであることは間違いない

トヨタが推し進めてきたTNGAを導入したモデルの車台を発表。「TNGAの取り組み状況」とするリリースで、“バッテリー性能の向上”や“ハイブリッド性能を15%向上させた”「2015年発売予定のFF系ミディアム車」という表現で伝えたモデルだ。秋登場の新型プリウスであることは間違いない[写真拡大]

 トヨタは2014年に68万4000台のハイブリッド車(HV)を日本国内で販売し、同社の新車販売に占めるHV販売構成比率は44%(台数ベース)に達した。取引先の部品メーカーなどに伝えた今後の社内計画&目標によると、2016年に76万台程度のハイブリッド車販売を見込むという。2015年の国内販売全体は2014年の実績を下回るとみており、HV比率はほぼ50%になる見込みだ。一方、国内でのHV生産は132万台と2014年実績比で約3割増える。国内生産に占めるHV製造比率はトヨタ車全体の40%を超えるとみられる。

 今年4月にエコカー減税の基準が大幅に引き上げられた。トヨタは前述のようにHVの新型車投入や増産で現行の40%台半ばから大きく構成比を引き上げ、エコカー減税適合車種をHVで増やす。富士重工業やホンダもHVを追加し、輸入車各社、なかでもドイツ勢のメルセデス・ベンツやフォルクスワーゲン(VW)は家庭で充電できるプラグインハイブリッド車(PHV)やクリーンディーゼル車を発売。エコカー減税の対象車種を増やす。国内市場の伸びが見込みにくいなか、自動車各社はエコカー減税対象車の投入で販売現場を下支えする構えだ。

 エコカー減税・免税対象はこの3月までは、国内販売台数全体の8割を超えるとされていた。しかしながら、2015年4月以降の新基準を満たす新車は5割程に減った。日本自動車販売協会連合会(自販連)によれば、「ほとんどのガソリン車は税負担が、従来よりも増える」。新車購入時のユーザー負担は最大で10万円程度増えるとされる。ガソリン車の例を挙げると、新基準の適用で富士重の主力車「レヴォーグ」の一部モデルは6万2000円程度の負担増、VWの人気モデル「ゴルフ」の一部車種では4万3000円程度の負担増になる。

 トヨタは今年秋に世界最高の燃費性能、JC08モード燃費で40km/リッターを超える好燃費を叩き出す新型プリウスを市場投入する。おそらくだが、10月開催の「東京モーターショー」でワールドプレミアとなりそうだ。同時発表にはならないだろうが、追加モデルとしてプリウスPHVが翌2016年には発売される。このPHVは、EVモード走行距離が60kmと現行の2倍以上となる予定だ。

 この新型プリウスは、トヨタが推し進めてきたTNGA(Toyota New Global Architecture)を導入したモデルだ。先般、トヨタが「TNGAの取り組み状況」とするリリースで、“バッテリー性能の向上”や“ハイブリッド性能を15%向上させた”「2015年発売予定のFF系ミディアム車」という表現で伝えたモデルが新型プリウスであることは間違いない。

 裏付けは昨年トヨタが発表した「独自にSiC(シリコンカーバイト/炭化ケイ素)パワー半導体を開発した」という内容のリリースだ。家電や産業機器、鉄道車両にいたるまで電力変換に必須なコンバータやインバータだが、これらに必要なのがパワー半導体だ。ガソリンエンジン車でも燃料噴射装置や可変バルブのコントロールなどの電子部品に、このパワー半導体が必須だ。なかでもトヨタがSic半導体発表のさいに説明に使ったECU(Engine Control Unit)にも必須のパーツなのだ。このコントロールユニットのパワー半導体を従来のシリコンパワー半導体からSiCパワー半導体に換装することで、電力ロスが70%以上低減でき、ユニットそのものも25%(マイナス75%)程度の容積にサイズダウンできる。

 このSiCパワー半導体の採用で、前述した“ハイブリッド性能を15%向上させた”「2015年発売予定のFF系ミディアム車」が生まれるのだ。もちろん、SiCパワー半導体は、HVだけでなく普通のガソリンエンジンやディーゼルエンジンの電子制御にも応用できる。

 話がSiCに流れたが、新型プリウスは新世代トヨタの新エンジン、新しいトランスミッション、SiC半導体、そして遂にバッテリーをリチウムイオン電池に換装、それらを詰め込んだハイブリッド・システムが一体化されたパワートレーンが搭載される。搭載するシャシーは「TNGAの取り組み状況」とするリリースと一緒に公開された写真である。

 富士重は今年5月にも小型ワゴン「インプレッサスポーツ」にHVを追加する。価格は200万円台前半で、新基準での減税が適用される見通しだ。ホンダは2月にHV専用の新型ミニバン「ジェイド」を発売し、間もなくHVコンパクトワゴン「Shuttle(シャトル)」を発売。また年内をめどに「オデッセイ」にもHVを追加投入する。

 輸入車の対応も進みそうだ。フォルクスワーゲン(VW)やアウディ、メルセデス・ベンツのドイツ勢は日本で相次ぎ主力車種にPHVやディーゼル車、電気自動車(EV)などを投入する。

 HVの更なる効率アップと新モデル投入に熱心な国内2社のトヨタ、ホンダだが、その販売比率は北米でも数%、ディーゼル車がほぼ半分の欧州ではさらに低い。ただ、日本で販売が増えれば性能やコスト競争力は上がり、輸出の増加につながる可能性もある。

 ハイブリッド車は同程度のガソリン車より割高だが、量産効果もあり価格差は縮小している。エコカー減税の見直しでさらに価格差は縮まる。(編集担当:吉田恒)

■関連記事
噂どおり1.5リッターターボを搭載して新型ステップワゴン登場
水素で走る燃料電池車の未来は? 水素革命巻き起こるか
レクサスRX、上海でダウンサイジング・ユニット搭載車を発表
トヨタ“意志ある踊り場”から2歩踏み出す。メキシコ、中国に新工場建設
トヨタ、メキシコと中国に新工場を建設

※この記事はエコノミックニュースから提供を受けて配信しています。

関連記事