政治家に訊く:森雅子自民党参議院議員(2)「女性の人材不足は会社の恥」

2014年11月13日 17:01

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記事提供元:さくらフィナンシャルニュース

【11月13日、さくらフィナンシャルニュース=東京】

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21カ国・地域が加盟するAPEC(アジア太平洋経済協力会議)の域内で女性が活躍している好例を共有するため「APEC女性活躍推進企業50選」がまとまった。日本勢では、国内の女性リーダー比率が30%近い資生堂や子育て中の母親を積極的に採用するモーハウス(茨城県)など5社が紹介。SFNは、第二次安倍政権で女性活力・子育て支援担当相に抜擢された森まさこ議員に話を聞いた----。
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■消費増税で子ども子育て支援に0.7兆

横田 森さんが大臣在任中に力を入れていたお仕事に、「子ども子育て支援」があります。そういう意味でも、今回、モーハウスさんが紹介されたことはご自身にとつても感慨深いものがあるのではないでしょうか。

森 大変喜ばしいことだと思います。先日、財政金融委員会で麻生太郎財務相が、消費税を10%までに引き上げた場合、0.7兆を改めて子ども子育て支援に使うと明言してくれました。

保育士さんに関しても人材確保と給与引き上げが課題とされていましたが、解消に向けてさまざまな試みがなされています。

先月の国家戦略特区諮問会議では、地域限定で働く保育士の資格を新設する改正案が提出されましたし、塾や予備校が受験生の減少であいた教室などを活用し、保育園を開設する例なども出てきました。

横田 モーハウス同様に紹介された資生堂は国内グループの女性リーダーの比率が30%近いですが、企業の女性役員や管理職はまだそれほど多いとは言えません。100人以上の民間企業の管理職の女性比率は、2013年6月の時点で7.5%に過ぎません。また、安倍首相の「まずは役員に一人は女性を登用してほしい」という要請に対して、財界からは、「人材が不足している」との不満の声が漏れ伝わってきています。

森 今年4月には、野村信託銀行で銀行業界初の女性トップが誕生しました。みずほ銀行や三井住友銀行でも初の女性役員が就任しています。今後は、さらに女性社長が増えてくるはずです。

住宅設備では国内最大手のLIXILでは採用の3割を女性にしています。会社にも勢いが出てきたと感じますし、男女の別なく、ライバルと競い合って、切磋琢磨し、腕を磨き合っている。こういう会社から、生え抜きの女性社長が出る可能性は高いと思いますし、「指導的地位に占める女性の割合を2020 年度までに30%程度にする」という日本再興戦略の立てた主要施策の実行も難しくないでしょう。

■女性管理職のリーダー教育

社内に人材がいないからよそから引っぱってくるというのは、非現実的な案だと感じます。会社で育てて、今まで存在しなかったパイプラインを埋め、そのパイプラインを上がっていくというモデルをつくることが必要。

これまで、日本企業では、男性の場合は、いわゆる「帝王学」を学ぶなり受け継ぐなりしてきました。例えば、大手町あたりの大企業に入社すると、夜、新橋のガード下あたりで一杯やりながら、「地方出張をオファーされたら、必ず先輩の言うことを聞いて汗をかいてこい」、「戻って来たら課長にはなれる」、「1年ぐらいは霞が関に出向して人脈をつくるのもいい」など、社内出世すごろくをわかりやすく解き明かしてくれる。

失敗した時のしかり方ひとつとっても、男女では異なります。すごろくで「一回休み」となってしまった時に、どうすれば再びすごろくに戻ればいいのか誰も教えてくれません。

横田 失敗経験のある女性のロールモデルが社内にいないというのも大きいのではないでしょうか。失敗すると、転職や結婚退職というパターンに逃げ込む女性も少なくなかったように思います。

森 そうですね。男性の上司も「どうせこの子はいつかいなくなる」という気持ちが心の奥底にあるのでしょう。「泣くな、いいよ」で終わってしまう。何が悪いのか、どうすれば再び這い上がれるのか、チャンスをつかめるのか、教えてもらわなくてはわからない。

女性はそもそも「新橋のガード下」にも誘われないし、結婚したら、誘われても物理的に不可能です。しかし、これからは、女性を管理職にするために、リーダーシップ教育やキャリア教育をしていく必要があります。本人の力だけでは土台無理なのですから、会社が力を貸してあげなくてはいけない。経営陣が、

「女性の人材が少ない」

と、言うのは会社の恥だという意識を持ってもらわなくてはと考えます。

それは、会社が「教育」をしていないということを理解しなくては、女性特有のキャリア教育なんて夢のまた夢です。夜できないのなら、昼間にやればいい。

ある食品会社では、会長が率先して、女性だけを会長室に集める日をつくり、「帝王学」を教えているそうです。こうした取り組みが他企業にも広がっていけば、女性登用推進の環境も整ってくるでしょう。(聞き手・横田由美子)【了】

森雅子/もり・まさこ
1964年、福島県いわき市生まれ。東北大学法学部卒業後、27歳で司法試験に合格(司法研修所第47期)。95年、弁護士登録。98年、独立し弁護士事務所設立し、消費者事件を中心に手がける。ニューヨーク大学ロースクールを経て、金融庁に任期付職員として入庁。消費者保護活動に奔走。2007年、参議院議員選挙に自民党公認で福島県選挙区から出馬し、初当選。現在2期目。著書に「あきらめずまっすぐに」(グラフ社)がある。HPは、森まさこ参議院議員オフィシャルサイト(http://www.morimasako.com)

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※この記事はSakura Financial Newsより提供を受けて配信しています。

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