インターストッフ・アジア・エッセンシャル2014秋レポート 2大潮流・エコとファンクション

2014年10月20日 14:42

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記事提供元:アパレルウェブ

 9月25~27日の3日間、香港コンベンション&エキジビションセンターで開かれたテキスタイルの国際見本市「インターストッフ・アジア・エッセンシャル2014秋」。同展がこの数シーズン打ち出しているのが、“エコ型”と“機能性”。欧米を中心に、環境に対する意識やフィットネスへの関心が広がっていることを受け、出展社側もこの2点を切り口としたアプローチを強めている。メッセフランクフルトのオラフ・シュミット副社長は、アパレルウェブの取材に対し、「エコ対応型素材と機能性素材は、世界的トレンドでもあります。とりわけミドルレンジからハイエンドにおいてますます需要が高くなるため、今後はより高い品質も求められるようになるでしょう」と強調した。

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【インターストッフ・アジア・エッセンシャルとは?】
ドイツに本社を置くメッセフランクフルトが春と秋の年2回香港で開催しているテキスタイルの国際見本市。同社が海外で開いた初めての見本市でもある。2014秋展は、地元香港をはじめ、中国、日本、台湾、韓国、イタリア、ドイツの7カ国・地域から147社が出展した。1987年から27年の歴史を持つが、生産工場やバイイングオフィスの拠点が香港から中国へとシフトしていることなどから、近年は来場者・出展社数が減少。2014年秋展をもって終了することが決まった。今後は、同社が主催する「インターテキスタイル上海」に運営資源を集中し、エコなどのコンテンツも強化する予定だ。
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Function(機能)とFashion(ファッション)の融合

 同展では、全体の約3割にあたる41社が機能性素材を提案した。機能性が重視される背景には、(1)ヨガやフィットネス、ランニングなどの世界的ブーム(2)アパレルブランドのスポーツウエア市場参入(3)“スポーツミックス”がファッションカテゴリーの1つとして確立――などスポーツとファッションの融合があり需要を後押ししている。エバレスト社(台湾)は、原料調達から企画、製造までの一貫生産を強みに、大手スポーツアパレルの機能性素材を多数手がける。営業セクションのイヴォンヌ・ウェイ氏は、「ファッションブランドがスポーツウエアをデザインする際には、機能性素材についての知識が十分でないため、私たちの持つ様々な技術や情報をお伝えします。一方、スポーツブランドではファッション性の高いものを求める傾向が強くなっているため、例えばダブルフェイスやエンボス、グラデーションなどの加工表現を私たちからご提案しています」(営業部イヴォンヌ・ウェイ氏)。



エバレスト(台湾)は、ダブルフェイスやメッシュなどを様々な加工を提案。

・Foshan King(中国):初出展の同社は、軽量で柔軟かつ極寒環境における保温性に優れたナノ多孔性の耐水性繊維素材などを披露。サンプル商品の左側に見えるのが、高水圧耐久性に優れたミクロ細孔ドライメンブレン(膜)素材。世界初の技術。スポーツウエアやアウトドアウエア、レインコートなどに使用される。機能性だけでなく、リサイクル可能なプラスチックなども取り入れる。

・POIZTEX(韓国):汗を逃し耐水性に優れた機能性素材は、スキーウエアなどに使われる。ウール風の柄などデザイン性の高さも求められる

・M&J(台湾):ランニングブームに伴い、スポーツウエアのファッション化がますます進行。ブースの一角には、色とりどりのマカロンを並べたビジュアル広告を用意。「機能性だけでなく、様々なカラーに対応できることをアピールしている」という。

エコ基準はより高度化・細分化

 日本や欧米からの需要の高まりとともに、同展のメインコンテンツの1つとなっているのが、環境対応型素材。53社の各ブースには、環境対応型であることを示すリーフモチーフのロゴが付与された。ロゴは、原料やその調達方法、生産工程など、サプライチェーンにおけるどの時点でエコに対応しているのかによって4種類に色分けされる。評価基準がより細分化・高度化されてきいることがうかがえる。


エバレストは、エネルギー消費を最小限にとどめた生産工程を自社工場で実現。スイスに本拠を置くブルーサイン・テクノロジーが認証機関となる「ブルーサイン」を取得している。「欧米バイヤーへのアピールにつながる」(同社)

江蘇新凱盛企業發展(中国)は、グローバル・リサイクリング・スタンダード(GRS)を遵守した100%ポリエステル製のフリース素材とポリエステルとスパンデックスの合成繊維が強み。「特に日本や欧州でのエコ意識が高まっており環境対応には力を入れている」
※GRS(Global Recycle Standard)認証は、リサイクルされた原料を使用して製品を製造 する際に有効な追跡のための認証プログラム。

ボタンインターナショナル(香港):地元香港のボタンインターナショナルは、貝やなど南米で取れるCORAZZOという果実などを原材料にしており、他者に比べてカラーバリエーションが豊富なのが強み。欧州などを中心に、ハイエンドなスーツへの需要が多い。

新内外綿

 初出展した日本の新内外綿は、2013年10月に米NYのテックスワールドで初披露した植物由来の「ボタニカルダイ」を展示した。イチゴやイチジク、アボカドなどから抽出した自然由来の天然染料と、安全性の高い化学染料を融合させるという独自の染色技術により、「植物や果物ならではの自然の色調が表現できるのに加え、天然染料だけでは実現しない堅牢度も生まれます」(山田氏)。自然な色味や優しい風合いが出せるメレンジ素材で提案。すでに来春の本格展開を予定しているが、同展でも子供服ブランドからの引き合いや、海外ニッターによる受注があるなど大きな反響を得た。

イチゴやイチジク、アボカド、ブドウなど16色の植物・果物から抽出。

開発・マーケティング部部長の山田光浩氏

韓国ハイテクテキスタイル研究所(KOTERI)

 国内外の学術機関が最新のテキスタイル技術を発表する「リサーチ&エデュケーション・ゾーン」では、韓国ハイテクテキスタイル研究所(KOTERI)が、ニット向けの液体アンモニアによる処理技術などを紹介した。「織物ではすでに日本の日清紡や東洋紡が開発しているのですが、ニットでは世界初の試みです。ニットは伸縮性が高いため、いかにテンションを維持しながら処理するかが重要になってくるのです」と話すのは、研究開発に携わるイ・インヨルマネージャー。液体アンモニアで浸透処理を行うため、水による洗浄処理をする必要がなく、水の消費を最小限に抑えることができる。また液体アンモニアは98%がリサイクルできる。「環境への負荷が少ないだけでなく、製品になった後の柔らかい風合いや、洗濯後の縮みが少ないのも特徴です」(同氏)。すでに多くのアパレルブランドから興味を示しているといい、年内にも実用化に向けて稼働する予定だ。

左が液体アンモニア処理を施したポロシャツ。洗濯後の縮みに大きな差が出ることがわかる。

研究開発に携わったKOTERIグリーンテクノロジーチームマネージャーのイ・インヨル氏。

日本企業


 おもな出展国である中国、日本、韓国、台湾はそれぞれ、「エリート・チャイナ」(64社)「ファイン・ジャパン」(3社)「アメージング・タイワン」(11社)「プレミアム・コリア」(3社)というパビリオン名のもと出展。日本パビリオンに参加したのは、宇仁繊維、サンウェル、新内外綿の3社。7社・団体が出展した前回春展に比べて減少したが、品質や機能性の高さで各社とも連日賑わいを見せた。


宇仁繊維:同社オリジナルブランド「小紋工房」では、トレンド商材を幅広く提案。スポーツモードの影響を受け、ダブルフェイスのメッシュやボンディングなどが継続して人気。「ウィンドウ・ペンも反応がいい」

サンウェル:ウール素材などの反応がよかったサンウェル。「ウールは特に品質がわかりやすい。日本の高品質をアピールできる」(同社)と手応えを示した。

同見本市終了に出展者たちは…

 同見本市の終了に、出展者の反応はさまざまだ。エバーラスト社(台湾)は、「香港は、欧米のバイイングオフィスが集中している上、気軽に参加できるメリットもあるものの、私たちは、上海でも大型ブースを構えている。終了の影響はそれほど大きくない」と見る。一方、海外ビジネスの拠点として成熟した香港での見本市開催にメリットを感じていた出展者も多い。高品質シフォンを主力とするポリービューティーは、今回が2回目の参加。中国に製造工場を持つが、グローバルに取引先を取り込める香港に魅力を感じている。現在、香港に事務所を構えるため準備中。今回の終了を受け、香港ファッションウィーク(香港貿易発展局主催)など別の展示会への出展も検討したいという。 地元香港のボタンインターナショナルは、「7~8年ほど前から来場者が減少していた」と指摘しながらも、「香港は、欧州とアジア双方のトレンドが掴みやすい」とそのメリットについて話す。

 日本の出展者からも、終了を惜しむ声が聞かれた。常連のサンウェルは、同見本市の規模縮小を実感しながらも、「コストや開催場所の点においても、気軽に海外出展ができる見本市だっただけに残念だ」と話す。同社も上海に継続出展しているが、「上海は規模が大きい分、いかに香港のように来場者と密度の濃いコミュニケーションが図れるかが課題だ」とした。27年間の歴史に幕を閉じたものの、海外ビジネスの拠点として成熟した国・香港の存在感を存分に発揮した見本市となった。


ポリービューティーは、取引先の半数以上が日本だという。「日本のバイヤーは品質の高さを重視してくれる」。ニーズが高まっているデジタルプリントを手に。

(取材:アパレルウェブ編集部)

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